『ガメラ2 レギオン襲来』が鍵を握る?『貞子DX』はメタ構造の意欲作だ!
2019年にはニューズウィーク日本版が発表した「世界が尊敬する日本人100」に選ばれるなど、日本を代表すホラーアイコンの貞子。映画では『リング』(98)以降、数多くの登場作品が作られており、10月28日には最新作『貞子DX』が公開されたばかりだ。
時にはホラーアイコンとしてのライバル的存在である伽椰子とバトルを繰り広げるなど、様々なアイデアとともに進化を遂げてきたこのシリーズだが、今回の『貞子DX』もまた、ジャンルが特定できないユニークな快作となっているので、本稿では“ホラー”にとらわれない見どころを解説していきたい。
貞子の呪いのルールが現代的にアップデート!
“呪いのビデオ”を⾒た⼈が24時間後に突然死するという怪事件が次々と日本で発生するなか、IQ200の天才⼤学院⽣の⼀条⽂華(⼩芝⾵花)は、事件にまつわるテレビ番組で共演した霊媒師のKenshin(池内博之)から呪いの解明をけしかけられる。
「呪いなんてあり得ない」と無視していた文華だったが、興味本位でビデオを⾒てしまった妹の双葉(八木優希)から助けを求められ、⾃称占い師の前⽥王司(川村壱⾺)やネット上の謎の協⼒者、感電ロイド(⿊⽻⿇璃央)と共に呪いを解明しよう奔⾛。24時間のタイムリミットが迫るなか、仮説は次々と打ち砕かれてしまい…という謎解き要素も含んだストーリーが展開していく。
描かれるのはこれまでと同じく「見た者が必ず一定期間ののち死に至る」という“呪いのビデオ”の恐怖。しかし、SNS上にアップされた動画という形で貞子の呪いが拡散されるという設定や、ネットでの情報拡散の早さに合わせ、死までのリミットがこれまでの7日から1日に短縮されるなど、いろいろと現代的にアップデートされている。
この貞子の呪いが時代に合わせて変化していること、呪いがいわば“ウイルス”として爆発的に広がり大量発生していく様子など、新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックと重なる部分も。“貞子ウイルス”への対処法など、現実とリンクした部分もある物語となっているのだ。
現実的な物語を包み込む、メタホラー的なおもしろさ
そんな本作だが、現実を意識したストーリーに対し、作品自体はフィクションであることに自覚的という作りがユニークだ。例えば『リング』の物語が、劇中では都市伝説として語られており、本作が『リング』という虚構の延長線上の物語として扱われていることがわかる。
さらにホラーのお決まり“ジャンプスケア”が随所で執拗に盛り込まれていたり、自分にしか見えないなにかがじわりじわりと迫り来る『イット・フォローズ』(14)を思わせるような描写もあったりと、ホラー映画ということも強く意識されている。
映画であることに自覚的な本作の在り方を強く示しているのが、主人公の妹である双葉が子どものころによく見ていた映画として一瞬登場する『ガメラ2 レギオン襲来』(96)のVHS。『貞子DX』の木村ひさし監督がかつて助監督を務めた作品で、大量発生したものによって人類が滅亡の危機にさらされるという展開や、謎が一つずつ解明されていくミステリー的な構造など、『貞子DX』と通じるところがあり、その後の展開がほのめかされている。
こういった映画的な要素を数多く盛り込むことで、あくまで虚構であるということを、時にさりげなく、時に大胆にアピールする作品となっているのだ。
現実とリンクするような物語をホラー映画という虚構的枠組みのなかで描くことによって、結末に込められたメッセージを飲み込みやすくしている『貞子DX』。エンドクレジットからエンドクレジット後には、目の肥えた映画ファンをも唸らせるであろうエスプリの効いた帰結と、メタフィクションであることを強調する仕掛けも用意されているので、最後まで席を離れず確認してほしい!
文/サンクレイオ翼