超ド級のインド映画『RRR』S.S.ラージャマウリ監督が明かす、トンデモアクション撮影秘話や今後の構想
インド映画として数々の記録を打ち立て、日本でも熱狂的なファンを生んだ「バーフバリ」2部作。その熱狂がいまだ冷めやらないなか、同作のS.S.ラージャマウリ監督の新作『RRR』が公開された。なんと今回は「バーフバリ」2作を合わせた額も上回る、インド映画史上最大の製作費(7200万ドル=約97億円)を投入。予想をはるかに超えるスケール感と、目を疑うアクションの数々で、インド本国はもちろん、アメリカでも特大ヒットを記録した。
1920年代、英国からの独立の気運が高まるインドで、英国総督に連れ去られた少女を奪還しようとする男ビームと、総督の下で警察官となったラーマ。2人が育む友情を軸にしたこのエンタテインメント作品は、超トップスターの共演も話題で、ビーム役のNTR Jr.とラーマ役のラーム・チャランの白熱の名演技、怒涛のアクション、そして完璧なダンス…と見どころ満載。映画公開のタイミングで来日したラージャマウリ監督に、信じがたいアクションシーンの撮影秘話や、監督としての人生、影響された作品などを聞いた。
「スーパーヒーロー的な戦いではなく、リアルなアクションを目指しました」
『RRR』はオープニングから間もなく、ものすごい見せ場が用意される。チャラン演じる警察官ラーマが大群衆のなかに飛び込み、単独で暴動を抑え込むシーンだ。ラージャマウリ監督は自身のキャリア史上最も難しい撮影だったと次のように振り返る。
「チャランと撮った過去の作品『マガディーラ 勇者転生』では100人を相手にしたアクションに挑戦しました。でもその時は舞台を細い橋にしたので、主人公に向かって行く相手が数人に限定され、それほど難しくはなかったのです。そこで今回は全方向からの攻撃、それも1万もの人数だったらどうなるかチャレンジしたかったのです。スーパーヒーロー的な戦いではなく、リアルなアクションを目指し、ハリウッドでも活躍する世界有数のアクション振付チームに依頼しました。しかし彼らのアイデアに満足できず(笑)、ソロモンというインドの振付家と1か月かけて、群衆対1人のアクションを考えぬいたところ、ソロモンはスマートフォンでの撮影など、あらゆる方法を駆使して、私のアイデアを可能にしてくれました」。
このシークエンスは「エキストラが少ない日で800人。だいたい毎日2000人が参加して、各ポイントで戦ってもらった」とのことで、そのスケールには驚くばかりだ。
大群衆という点では、巨大な人間ピラミッドに主人公2人がよじ登るシーンもある。それが映像では数秒で非常に贅沢な使われ方をしているが、これも監督の意図だという。「あのシークエンスでは、時間の経過を表現したかったのです。主人公2人の友情が育まれ、それぞれの目的へ向かって葛藤する。そして友情が壊れることも予感させる。その一部が人間ピラミッドの描写でした。でもたしかに、もう少し長くお見せしたかったですね(笑)」。