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超ド級のインド映画『RRR』S.S.ラージャマウリ監督が明かす、トンデモアクション撮影秘話や今後の構想

インタビュー

超ド級のインド映画『RRR』S.S.ラージャマウリ監督が明かす、トンデモアクション撮影秘話や今後の構想

「自分でも『なにをやってるんだ?』というこだわりぶりでした(笑)」

【写真を見る】こんなアクション観たことない!ラージャマウリ監督が生み出した“肩車無双”はどう撮影されたのか?
【写真を見る】こんなアクション観たことない!ラージャマウリ監督が生み出した“肩車無双”はどう撮影されたのか?[c]2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

スケール感だけでなく、究極の“肉体芸”として観客のテンションを上げるシーンもある。NTR Jr.がチャランを肩車でかついで戦うのだ。このシーンの撮影についてラージャマウリ監督は「秘密を知りたいのですね」と笑いながら、秘話を打ち明けてくれた。
「もちろん実際に肩車をして、あのような動きをすることは不可能です。上に乗ったチャランをワイヤーで繋いでいるのですが、地上からの高さが変化するので、そのワイヤーを張ったり、緩めたり、調整は難航を極めました。なにかの拍子に落下する危険もあり、下のNTRは全速力で走っているわけで、これほどまでに複雑な演出は、大群衆のシーンとは違った意味で難しかったですね」。

来日を果たした主演のNTR Jr.、ラーム・チャラン、S.S.ラージャマウリ監督
来日を果たした主演のNTR Jr.、ラーム・チャラン、S.S.ラージャマウリ監督[c]2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

そして本作で最も観客を魅了するのが、主演2人が完璧に同じ動きをするダンスシーン。監督と共に来日した2人は、NTR Jr.が雄弁でアクティヴ、チャランが寡黙でクールと正反対の印象だったが、どのようにダンスを合わせたのだろう。
「たしかにNTRは自分が前に出るタイプで、何事もスピーディにこなします。そして2人はダンスのスタイルも違います。でも私は完璧に一致させたかった。足を動かすタイミングや角度、高さ、さらに指の向きまでを、撮影しながら1コマ、1コマ確認したのです。全体のショットを見て修正する監督は多いでしょう。でも私は1コマ、1コマすべてで一致させようとしました。自分でも『いったいなにをやってるんだ?』というこだわりぶりでしたね(笑)」。

「いつか『マハーバーラタ』を映画化したいと思っています」

こうした撮影での野心的アプローチにより、「バーフバリ」2部作、そして今回の『RRR』でインド映画界を代表する巨匠となったラージャマウリ監督。そのインスピレーションの源になっている映画について尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。
「日本映画はそんなにたくさん観ていませんが、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』には強烈なインパクトを受けました。西洋の作品ではメル・ギブソンの『ブレイブハート』から多大なインスピレーションを受けています。また映画ではありませんが、手塚治虫の『ブッダ』は単行本を机の上に並べてあり、10日に一度くらい手に取りますね。15ページくらい読んで泣いてしまうこともあり、深い部分で心を動かしてくれる作品です」。

日本人クリエイターの影響も受けているというS.S.ラージャマウリ監督
日本人クリエイターの影響も受けているというS.S.ラージャマウリ監督

ラージャマウリ監督は、父親も脚本家で映画監督。しかし現在の仕事は、自身の希望だったようだ。「父は工場の経営から映画業界に転身したので、人生の流れで脚本を書くようになりました。私の場合は、子ども時代からコミックや小説を読むのが好きで、友達や家族に読み聞かせたりするなど、もともと“物語”が好きだったのです。父の下で働くようになり、本格的に高いレベルでドラマを作ることを学ぶことができました」。

その父親は本作で原案に関わり、妻が衣装デザイナー、さらに息子がラインプロデューサーを務めるなど、家族と共に映画製作するのがラージャマウリ監督のモットーのようだ。
「映画製作はひとつのプロジェクトで長い時間を拘束されますから、家族が近くにいないと寂しくなるのです(笑)。もうひとつの理由は、家族が私の作品に対して厳しい批評家であること。平均以下の作品にならないように、つねに意見を言ってくれるので、私も全力を尽くせるのです。その意味でとてもラッキーですね」。

息子に自分の後継者になってほしいか聞いてみると…。「ある時は『英雄になりたい』と話し、別の時は『撮影監督がいい』『やはり映画監督に』と、息子の答えは変わります。そのたびに私は、なりたい職業にはそれぞれ学ぶ道があると伝えます。彼は短編を撮りましたが、満足していないようでした。ただ息子は周囲の人とうまくやって、誰からも好かれるので、その素養で将来の仕事が見つかると思います。いまは私の右腕として不可欠な存在ですが…」。そう話す時のラージャマウリ監督は、どこにでもいる一人の父親のような穏やかな表情になる。


撮影秘話から家族の話まで、穏やかな物腰で語ったS.S.ラージャマウリ監督
撮影秘話から家族の話まで、穏やかな物腰で語ったS.S.ラージャマウリ監督

最後にラージャマウリ監督の今後の夢を聞くと、壮大なプロジェクトの名が明かされた。
「いつか『マハーバーラタ』を映画化したいと思っています。インドを代表する一大叙事詩ですから。いますぐには無理ですが、チャンスが来れば私のスタイルで監督したい。1本では不可能なので、6本とか7本のシリーズになるでしょう。『RRR』の何倍の製作費になるか、見当もつきませんね(笑)」

ラージャマウリ監督の夢のプロジェクト。実現すれば、想像をはるかに超える映像とストーリーに世界が驚嘆することになりそうだ。

取材・文/斉藤博昭

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