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大九明子、三宅唱、瀬田なつき、早川千絵ら監督陣がエピソードトーク。エネルギーを秘めた「TIFFティーンズ映画教室」の継続を願う

イベント

大九明子、三宅唱、瀬田なつき、早川千絵ら監督陣がエピソードトーク。エネルギーを秘めた「TIFFティーンズ映画教室」の継続を願う

第35回東京国際映画祭「TIFFティーンズ映画教室 スペシャルトークショー」が30日、有楽町micro FOOD & IDEA MARKETで開催され、大九明子三宅唱瀬田なつき早川千絵ら、これまでに特別講師を務めた映画監督陣が登壇。一般社団法人こども映画教室代表の土肥悦子がMCを担当し、「TIFFティーンズ映画教室」参加経験者を迎えてトークを展開した。

【写真を見る】参加者と制作過程を振り返った監督陣。ファーストネームで呼び合うなど、距離の近さが感じられた
【写真を見る】参加者と制作過程を振り返った監督陣。ファーストネームで呼び合うなど、距離の近さが感じられた

「TIFFティーンズ映画教室」は世界的に活躍する日本の映画監督や、これからの日本映画を担う映画監督を特別講師に迎え開催しているワークショップ。今年は過去5年間を振り返り、コロナ禍にリモートで映画制作をしたチャレンジングな企画の思い出なども語った。

イベントではそれぞれの年から注目作品1本を上映。トップバッターで上映されたのは2017年制作の『1人ぼっちBOX』。特別講師を務めた諏訪は「準備をして撮影するのではなく、撮影しながら考えていくプロセスを選びました」と振り返り、子どもたちの着眼点や発想を最大限に活かした制作方法をとったと説明。ロケハン中、ガードレールに「1人ぼっちBOX」と書かれているのを見つけ「どういう意味だろう」と話し始めたのが本作誕生のきかっけだったとし、サスペンス風に仕上がった経緯を明かしていた。

2018年の上映作品からは『15の夏 優しい嘘はだれを幸せにするのか』。この年、特別講師を務めた大九はセレクト理由を「いち観客として楽しめたから」とコメント。「青春真っ只中にいる子どもたちが、青春ものを作るってありそうでないこと。信じられる映画だと思いました」と笑顔を浮かべ、「5年もしたらこのなかの誰かが、スタッフに混ざっている可能性もあります。かけがえのない大事な人たちという思いがありました」と撮影当時の心境を振り返った。

フォトセッションの様子
フォトセッションの様子

2019年制作の作品からは『四人間』を上映。この日出演が叶わなかった特別講師の杉田協士に代わり、チームリーダーのスタッフが登壇し、思い出話を展開。「なにか起こりそうでなにも起こらないところがおもしろい」との声が多かった本作。内容を思いついたきっかけを当時の参加者は「覚えてなくて…」と苦笑いしながらも、「最後の最後までいろいろと話したことだけは覚えています!」とコメント。また、SDカードから撮影データが飛ぶというアクシデントもあったが、結果、撮り直したほうが日の光の塩梅もよくなったという。映画のクレジットに「Special Thanks」を入れたのは、復元に協力してくれた方への感謝の気持ちであるとも説明していた。

2020年の特別講師は三宅で上映作品は『某マンションとほんの小さな音楽について。-OTO-』。「久しぶりに観たけれど、やっぱりすごくおもしろかった!」と興奮気味の三宅は、当時この企画への参加には前向きではなかったそう。その理由はオンラインで映画は作れないと思ったから。完成しなくてもいいし、完成しないこともこういった企画の醍醐味だと考えたが、出来上がった映画は発想がとてもおもしろかったと話す。「どの作品にもオンラインで(画面を通して)会話する場面が入っていた。なのに、この作品は(出演者全員が)離れている場所で撮影したにも関わらず、同じマンションに住んでいるという設定だった。そういう大嘘をついたところがおもしろくて(笑)、楽しませてもらったし意外性もありました」と見どころを熱弁した。


2021年の特別講師を務めた瀬田は撮影を振り返り、「オンラインだからみんなマスクを外して会話ができました。対面ではマスクが必要なので、ここまで(参加者の)表情が見えなかったはず。そこが逆に新鮮でよかったです」と笑顔。上映作品『紙ひこうき』の参加者は打ち合わせ時を振り返り、「人見知りでコミュ障であがり症なので、オンラインがありがたかったです」とにっこり。ネットのほうが友達を作りやすいタイプで、オンラインだからこそ参加できた企画だったとも付け加えていた。

最後の挨拶で諏訪は「こういった取り組みは映画ごっこになりがち。だけど『TIFFティーンズ映画教室』は作って終わりになっていないのが良いところ」と指摘。特別講師を担当する監督の存在が作品から見えるのもおもしろいポイントだと話す。大九も毎年おもしろいものが作られているからこそ、「やめないでほしい。続けてほしい」と訴え「毎年、ティーンズの方たちが新しい風や時代を持ち込んで作られています。続いていくエネルギーは十分にあると思います!」と呼びかけ、トークショーを締めくくった。

取材・文/タナカシノブ

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