『ザリガニの鳴くところ』リース・ウィザースプーン、敏腕プロデューサーの秘訣は抜群の発掘センス!
敏腕プロデューサーの秘訣は“本好き”!抜群のコンテンツ発掘力
ウィザースプーンが敏腕プロデューサーであるゆえんは、そのコンテンツ発掘力にある。小さい頃から優秀だった彼女は読書家としても有名だが、物語への深い読解力が優れた作品を見極めるセンスにつながっているのだろう。
出版される前に原作を手に入れ、一晩で読破したという『わたしに会うまでの1600キロ』にせよ、リアーン・モリアーティによる小説「ささやかで大きな嘘」を読んだ彼女が、キッドマンに共同プロデュースを持ちかけたことでドラマ化が実現したという「ビッグ・リトル・ライズ」にせよ、彼女の秀作を見分ける嗅覚、そしてスピーディな行動力には驚嘆させられる。
さらに2018年にはオンライン上の読書クラブ「リースズ・ブック・クラブ×ハロー・サンシャイン」をローンチ。数々の女性作家による良作を紹介しているが、実は『ザリガニの鳴くところ』の原作小説の発掘にはこのブッククラブが一役かっているのだ。
ブッククラブから火がつき、1500万部を突破したベストセラーを映画化『ザリガニの鳴くところ』
小説「ザリガニの鳴くところ」を手がけた動物学者のディーリア・オーエンズは、子供時代を森の中で育った。その頃に母親から言われていたのが「ザリガニの鳴くところまで行きなさい」という言葉で、大自然の奥深くまで体験することを勧められていたのだという。昆虫や羽根を収集し、野生から様々なインスピレーションを受けた彼女は、その後 (元)夫と暮らしたアフリカでの生活を紹介する3冊のノンフィクションを上梓。そのいずれもが世界的ベストセラーとなっている。
そしてリタイア後、69歳の時に執筆したのが映画の原作本となった処女小説。それをウィザースプーンがブッククラブの課題本として取り上げたところから火がつき、ほどなくベストセラーのリスト入りに。「ディーリア・オーエンズの本は極めてオーセンティックで、彼女が実際にこういう場所で育ったということが伝わってきました」とウィザースプーンは原作本の持つリアリティあふれる力強さについて語っている。
幼い頃に両親から見捨てられたヒロインであるカイアは、片田舎でコミュニティから外されながらも大自然から多くのことを学んで過酷な世界を生き抜いていく。それは大自然が彼女に与えてくれた知識という恵みであり、生きる術だった。
逆境のなか、自分の得意分野を武器に自分の生きる場を確立していくバイタリティあふれるカイアの姿は、女優として一時期低迷しながらも、優れた作品を見分ける力と長いキャリアから得た知識をフル活用して道を切り拓いたウィザースプーンの姿にどこか重なる。
そんなウィザースプーンが率いる「ハロー・サンシャイン」は昨年980億円という驚異の評価額をたたき出し、さらなる飛躍を遂げようとしている。敏腕プロデューサーの彼女が太鼓判を押す『ザリガニの鳴くところ』。美しい大自然の風景と可憐&たくましいカイアのミステリアスな魅力にうっとりとしつつ、様々な想いが一挙に押し寄せる真実の行方を見届けてほしい。
文/足立美由紀