アニメ化決定の「戦隊大失格」さとうけいいち監督に直撃!“アンチヒーロー”を描く意義と原作の魅力とは
映画化もされた大ヒットラブコメ「五等分の花嫁」の原作者の春場ねぎが、2021年より週刊少年マガジンで連載している「戦隊大失格」。先日アニメ化が発表され、監督は「TIGER & BUNNY」や『GANTZ:O』(16)などを手掛けたさとうけいいちが務めることが明らかになった。
MOVIE WALKER PRESSではこのアニメ化発表にあわせて、いち早くさとう監督にインタビューを敢行。独自の視点でヒーロー作品を描き、さらに元祖である特撮の戦隊シリーズでデザイナーも務めてきたさとう監督に、作品の魅力やアニメ化への意気込みを語ってもらった。
「この作品に出てくる戦隊が、どのくらい失格なのかをどう描くかが大事」
「戦隊大失格」は、人類の守護者である竜神戦隊ドラゴンキーパーと世界征服を企む怪人が互いの存亡をかけて戦う世界が舞台。しかし、悪の軍団の幹部怪人たちは、わずか1年でドラゴンキーパーによって壊滅し、残された戦闘員たちは戦隊に屈服。民衆の前で毎週ドラゴンキーパーに負ける戦いを挑み続けることを強制された道化と化していた。圧倒的な力で戦隊に隷属させられるなか、この状況を覆そうと行動する「戦闘員D」の活躍を描いている。
『ウォッチメン』(09)やAmazon Originalシリーズのドラマ 「ザ・ボーイズ」などで知られる“アンチヒーローもの”を描く「戦隊大失格」。こうした善悪の視点を変えるという試みがなされたヒーロー作品に関わる経緯を、「タイトルに“戦隊”という文字が入っていたということと、僕も特撮の戦隊シリーズには長く参加していたということもあって、『こういう作品って興味ありますか?』と声をかけられた感じです」とさとう監督は明かす。
原作コミックスを読み込んださとう監督は、「日曜朝に放送している王道の戦隊とは、カメラやドラマの向いている方向が違うんだ」と思ったという。「近年、ヒーローの存在に対するアンチテーゼ的な表現の作品は、海外のコミックスやドラマで描かれています。一方、僕自身もヒーローものに関して何本か手掛けていて、時代を見据えたうえで、さらにその先を見据えた作品を作ってきたつもりです。なので、いまの流れからこういった作品が日本で描かれることは不思議ではないと思っていましたし、素直におもしろいと思いましたね」と作品の世界観に惹きつけられ、監督を引き受けたと話す。
では、「戦隊大失格」という作品のどのような部分に魅力を感じ、どのように描いていきたいかを尋ねてみた。「『戦隊大失格』というタイトルですから、この作品に出てくる戦隊が、どのくらい失格なのかをどう描くかが大事。一方で、やはり主人公である戦闘員Dがどんな目的をもって大戦隊に挑んでいくかという部分が、この作品の魅力でもある群像劇になっているので、最も重要だと思っています。原作者の春場ねぎさんともお話をさせていただいて、戦闘員という格下な立場の男が、どうやって大きな力を持つ戦隊の連中に挑んでいくかというところを、アニメではよりソリッドにしつつ明確に提示できたらという想いで制作しています。戦闘員Dの“悪っぷり”をちょっとしたコメディを使いながら明確に、最後までブレないように作ろうというのが、僕が取り組んでいる状況です。戦闘員Dのキャラクター性を、映像にするときにどう料理してくるかを観てほしいですね」。