アニメ化決定の「戦隊大失格」さとうけいいち監督に直撃!“アンチヒーロー”を描く意義と原作の魅力とは
「映画を作るのと変わらない手間と熱量で作っています」
実際に制作を進めながら作品を読み解くことで、原作のさらなる魅力に気づき、絵コンテなどの作業にも力が入ってしまっているそう。「最初は、コミックスという指針があるから、絵コンテもスイスイいけるだろうと思っていたんですが、いきなり壁にぶち当たってしまって。戦闘員D、彼のキャラクターを表現しようと、コミックスから切り離して考えて、絵コンテを描きはじめてたんですが、それがダメでした。僕的には映像がつながりやすいと感じることができたのですが、この方法はオリジナル作品や映画を作るのと変わらない手間と熱量が必要になるので、僕と長くやっている現場のスタッフからは『あ〜あ、スイッチ入っちゃったね』と言われています(笑)」と、「戦隊大失格」という作品へ思い入れの強さが増していったことを語った。
特に熱量をかけて作業している部分は、「戦隊大失格」の世界の切り取り方であるとさとう監督は話す。「コミックスでは主観的というか、キャラに寄り気味に描かれているんですが、僕としては見ているところ、切り取っている世界がもうちょっと客観的に『この世界はこうなっているんだよ』と見せるようにしています。ワイドレンズを使って撮っているという感じですかね。セリフやカットの構成は原作から大きく変わらないけど、そうした視点を取り入れるとより伝わりやすくなっているように思えたんです。そうした、映画的な思考で撮るのがおもしろくなってしまって(笑)。自分自身で寸止めがきかなくなっている感じがあります。そこは攻めている部分でもあるので、完成した映像を楽しみにしてもらえればと思います」。
原作と向き合いながら制作を進めているさとう監督から、最後に放送に向けてのメッセージが。「今回発表されたアニメーション用PV第1弾で初めて本作に触れた人は、レッドやイエローなどの姿が出てくるので『これ、戦隊ものだよな』と当然思っているはずです。これが、どんなアプローチの話なのかも気になると思います。ただ、放送開始はまだ先なので、始まるまでに原作コミックスをどんどん読んでいただいて、『この描写を監督はどう表現するんだろう』という形で、まず構えて読み込んでほしいです。すぐにアニメ本編が観られるのならば『まずはアニメを楽しんでください』と言いたいんですが…。そこは本当にすみません!まずは『戦隊大失格』という作品を読んでもらうこと、それに対してヒーローものをたくさん撮ってきた僕という監督がどうやって料理していくのかを楽しみにして待っていただけるとうれしいです」。
取材・文/石井誠