静の描写も緻密な『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、フィルムの質感がマッチ『ケイコ 目を澄ませて』など週末観るならこの3本!

コラム

静の描写も緻密な『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、フィルムの質感がマッチ『ケイコ 目を澄ませて』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、ジェームズ・キャメロンが監督を手掛ける超ヒット作の13年ぶりとなる続編、元プロボクサーの小笠原恵子による自伝を基に、聴覚障害を持つ女性がボクシングと向きあう姿を描くドラマ、離婚を目前した夫婦が、結婚前夜の記憶を辿り愛の軌跡を確かめていくミュージカルの、胸に迫る3本。

「スクリーンで見せる」ことへのこだわりに圧倒される…『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(公開中)

【写真を見る】海に潜り、空を飛び…ぜひ大スクリーンで堪能したい!(『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』)
【写真を見る】海に潜り、空を飛び…ぜひ大スクリーンで堪能したい!(『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』)[c] 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

デビューから約40年、ハリウッドの第一線で活躍してきたジェームズ・キャメロンの集大成というべき超大作『アバター』の第2章。家族と平和に暮らしていたジェイク(サム・ワーシントン)の前に再び地球船団が飛来。森を追われた一家は海辺の部族に身を隠すが、この地にも武装した人間たちが迫っていた。

迫真の3D映像で“革命”と呼ばれた前作から13年。新たなテクノロジーを投入した今作は、パンドラの情景やスペクタクルなバトルなど雄大な見せ場はもちろん、木漏れ日に照らされた肌の質感や、ふとしたしぐさや眼差しで気持ちを伝えあう人々の姿など静の描写も緻密で息吹すら感じそうな存在感。スマホやタブレットで気軽に映画が楽しめるようになった今日、キャメロンの「スクリーンで見せる」ことへのこだわりに圧倒される一本だ。(映画ライター・神武団四郎)

迷えるケイコの複雑な心象風景を芳醇に描きだす…『ケイコ 目を澄ませて』(公開中)

ケイコが通うボクシングジムの会長には三浦友和(『ケイコ 目を澄ませて』)
ケイコが通うボクシングジムの会長には三浦友和(『ケイコ 目を澄ませて』)[c]2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

レフェリーやゴングの音、セコンドの指示すら聞こえないままリングに上がり続けるボクサーのケイコ。しかしある日突然、ジムの閉鎖が発表される…。本作は、聴覚が不自由な元プロボクサーの小笠原恵子さんの行き様に触発されて生まれたヒューマンドラマだ。『きみの鳥はうたえる』(18)の三宅唱監督が、今年大活躍中の岸井ゆきのを主演に揺れ動きながらも歩み続けるケイコの心のざわめきを活写。今回撮影で使用された16mmフィルムのザラリとした質感が物語に絶妙にマッチしている。

耳の代わりに、研ぎ澄まされた感性と瞳で物事を捉えるケイコ。愛想笑いが嫌いで嘘がつけず、安易な同意もしないそのまっすぐな姿がいい。ジムの会長(三浦友和)から「ボクシングの才能はないが、人間としての器量がある」と評されるケイコが、「怖い」や「痛いのは嫌い」と意思表示しながらもボクシングへと邁進する姿が尊くて、美しくて、目が離せない。そんな応援せずにはいられないケイコを岸井が全身全霊で体現。笑顔もセリフもほとんどないなか、迷えるケイコの複雑な心象風景を芳醇に描きだしてみせた。(映画ライター・足立美由紀)


シンプルで力強い歌詞と、美しい旋律が印象的な楽曲の数々…『トゥモロー・モーニング』(公開中)

結婚前夜と離婚前夜を往復しながら、一組の男女の人生を振り返る『トゥモロー・モーニング』
結婚前夜と離婚前夜を往復しながら、一組の男女の人生を振り返る『トゥモロー・モーニング』[c]Tomorrow Morning UK Ltd. and Visualize Films Ltd

世界最高峰のミュージカル・スター、サマンサ・バークスとラミン・カリムルーの競演で贈る共感必至のミュージカル・ラブストーリー。才能あふれるイギリス人音楽家、ローレンス・マーク・ワイスが脚本、作詞、作曲を手がけ、世界中で話題を呼んだ舞台を、「CHESS the Musical(チェス)」の演出、振付家、ニック・ウィンストン監督が新バージョンで映画化した。主人公はロンドンで出会い、大恋愛の末に結ばれた結婚10年目の夫婦。翌朝に離婚調停の審理を控えた2人の胸に、10年前の結婚式前日の様々な思い出が去来する…。

“結婚前日”と“離婚前日”の時間軸のみを行き来しながら、1組のカップルの愛の軌跡を描くという粋な演出が光る。感情移入できるシンプルで力強い歌詞と、耳に残る美しい旋律が印象的な楽曲の数々。そして、人生の岐路に立つ男女の繊細な心の動きを情感たっぷりに歌い上げるサマンサとラミンの圧倒的な歌唱力。ミュージカル映画としての音楽のすばらしさを挙げるとキリがないが、現代の家族ドラマとしても見応えたっぷりなところが本作の魅力だ。それぞれ夢と野心を胸に抱いた若いカップルが、ともに子育てしながら家庭を築いていく。しかし、その後、若き日の夢を実現させたのが一人だけだった場合、夫婦のバランスはどうなるのか。舞台版では登場しなかった息子役の愛らしさが物語に大きな説得力をプラスしているのもポイント。2人の出会いを思いだしたとき、笑顔が浮かぶカップルならば、やり直すチャンスは十分にあることを気づかせてくれる。(映画ライター・石塚圭子)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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