ソン・ヘギョが復讐に燃えるヒロインに変貌!注目の韓国リベンジドラマ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」
『オールド・ボーイ(2004)』(03)に代表されるパク・チャヌク監督の復讐三部作や、近年ではドラマ「マイネーム: 偽りと復讐」「梨泰院クラス」など、珠玉のリベンジ・ストーリーを世に送りだしてきた韓国エンタメ界。そしてまた、新たな快作が誕生した。12月30日よりNetflixにて独占配信中の「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」だ。
建築家になることを夢見る、ごく普通の女子高生ドンウン(ソン・ヘギョ)。しかし、悪夢のような校内暴力を受け、退学を余儀なくされる。死も意識したドンウンだったが、心に深い闇を抱えたヨジョン(イ・ドヒョン)や同じく暴力の被害者であるヒョンナム(ヨム・ヘラン)の助けを得なて、加害者たちへ人生を賭けた報復を開始する。
“メロ職人”の脚本家×ジャンルドラマの名手が挑むリベンジ・サスペンス
本作を手掛けた脚本家のキム・ウンスクは、最高視聴率57.4%を記録した「パリの恋人」を筆頭に、ヒョンビンとハ・ジウォンのラブコメディ「シークレットガーデン」、大韓帝国の皇帝と女性刑事が時空を超えて繰り広げるファンタジーロマンス「ザ・キング: 永遠の君主」など、数多くの傑作ラブストーリーを生みだしてきた。そんなメロドラマの旗手が、冷酷で濃密な復讐劇に挑戦する。
きっかけは、家族との会話だった。校内暴力の話題が出た時、来年高校2年になる娘から「私が誰かのことを死んでしまうぐらい殴るのと、私が死ぬほど殴られるのと、どちらの方が辛いだろう」と尋ねられ、ショックを受けたという。高校生の子供を持つ親として、学校で起きる暴力をテーマにしなければならないと考えたキム·ウンスクは「被害者が最も傷つく言葉は“それでお前は何の過ちもないの?”というセリフだ。“そうだ。何の過ちもない”という一言を、使命のように理解させるという気持ちで書き上げた」と、シリーズに強烈なメッセージを盛り込んだことを明かした。
さらに、「被害者の方たちは、加害者には現実的な補償よりも心からの謝罪を望むと言う。でも、世俗に疲れた私としては、心からの謝罪で何が得られるのかと悩んだ。暴力の瞬間、被害者たちは人間の名誉と栄光を失う。 彼らが望むのは、“得る”のではなく“取り戻す”こと。謝罪を受けてこそ原点であり、そこから始まるという思いでタイトルを“ザ・グローリー”と名付けた。 そして主人公たちを応援する作品を作ることになった」と、タイトルの舞台裏を伝えた。
復讐心を抱くヒロイン、憎々しいヴィラン、頼もしい助力者…演技派たちの力演が見逃せない!
こうして製作陣が心血を注いだドラマに、韓国ドラマに欠かせない演技派俳優たちが魂を吹き込む。校内暴力で人生を破壊され、命を懸けた復讐を誓うドンウンには、ソン・ヘギョが抜擢された。チョ・インソンと共演した「その冬、風が吹く」で一大ムーブメントを巻き起こし、かつてキム・ウンスクとタッグを組んだ「太陽の末裔」も、韓国で多くのドラマ賞を制した。
繊細で深みある演技に定評のあるソン・ヘギョは役作りについて、「慰めが多く必要な人物であるからこそ、哀れみを誘う演技をしない」という姿勢で、復讐という行為が浮き彫りになるようにした。そして、初めて挑戦したジャンルもののキャラクターを演じきるため、「幼いドンウンは無防備で傷つけられたが、大人になると加害者たちに凄絶な復讐をする人物なので、加害者たちに“私にはありあまるほどの力がある”という態度を見せられる人物に描こうと努力した」とも語る。アン・ギルホ監督とソン・ヘギョは、復讐に向かって猛進するドンウンのはっきりした目的を表現するために、ナレーションのセリフのトーンとテンポなどを一定に整え、細部を磨き上げた。
彼女の演技に、キム·ウンスク作家とアン·ギルホ監督は舌を巻いた。「“ソン·ヘギョにこういう表情、声、歩き方があるんだ”と驚いた。すべての場面でムン·ドンウンだった」(キム·ウンスク作家)、「ドンウンは、か弱いがタフでもある。 強さと繊細さを併せ持つ俳優は多くないが、最初からソン·ヘギョがよく合うと思った。 ソン·ヘギョとドンウンのシンクロ率は120%以上だ」(アン·ギルホ監督)と、ソン·ヘギョの新境地に賛辞を送った。
ドンウンの心強い助力者ヨジョンを演じたイ・ドヒョンは、「Sweet Home -俺と世界の絶望-」で多くのファンを獲得し、「18アゲイン」では百想芸術大賞TVドラマ部門男性新人演技賞に輝くなど、活躍が期待される新星だ。ヨジョン役について彼は、「私がどのように表現するかによって後半が変わるので、もっと激しく、もう少し淡々とと感情のグラデーションを調節してワンシーンごとに5つのバージョンを用意していった」と話し、裕福な家庭で何不自由なく育ったように見えて、実は影のあるヨジョンの両面性を表現するために尽力したことを明かした。キム・ウンスクもそんな彼に「チュ・ヨジョンをそのまま表現してくれた」と賛辞を惜しまなかった。
苛烈な家庭暴力の被害者であり、人生最大の賭けとしてドンウンと手を結ぶカン・ヒョンナム役のヨム・ヘランは、「ヒョンナムは劇中で最も愛らしい人物」というキム・ウンスクの言葉に「本当に愛らしく魅力的な人物として描いてくれた。多彩なカラーをヒョンナムに与えてくれたので、どのように表現するか本当に悩んだ」と話した。テレビからスクリーンまで、数々の傑作を堅実な演技で支えてきた実力派俳優に対する製作陣の信頼は厚く、キム・ウンスクは「ひょっとしてキャスティングできないかもしれないという不安もあった。初めからヨム・ヘランをイメージすると本当によく台本が書けた。とにかく陽気で一番愛らしい人物として描いた」と、ヒョンナムを存分に演じきった彼女へ愛情を表現した。
「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」のもう一人の“主役”、凄惨な暴力でドンウンを追い込んだ首謀者パク・ヨンジンに扮したイム・ジヨンは、キャリア初のヴィランを演じた。『情愛中毒』(14)『背徳の王宮』(15)『スピリットウォーカー』(21)など、常に全身全霊で役に向き合う彼女は「ヨンジンはどんな人生を生きて、なぜこんな悪いことをするのか真剣に考えた。結局、彼女には罪の意識がなく、本当に無知だった。他の悪役を参考にしてみようかとも悩んだが、ある瞬間に私だけができるパク・ヨンジンを見つけた」と、本作にも心を尽くして臨んだ。無邪気な表情で卑劣な行動ができるキャラクターを完成させたイム・ジヨンを、キム・ウンスクも「天使のような顔に悪魔の心臓を持った人物を表現できる俳優」と褒め称えた。
キム・ウンスクは「校内暴力は韓国に限った話ではなく、すべての国が共感できる普遍的なストーリーです。加害者であり、被害者であり、親であり、当事者であり、それぞれの立場で感じる感情は似ていると思います」と力強く語る。美しさと残酷さ、そして切実さを持つこの復讐譚が、この冬韓国ドラマファンを熱くさせる予感がする。
文/荒井 南