藤ヶ谷太輔『そして僕は途方に暮れる』過酷な撮影で子鹿のようにげっそりも「人生の映画ベスト10に入り続けたら」と自信
藤ヶ谷太輔主演映画『そして僕は途方に暮れる』の公開記念舞台挨拶が1月14日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、藤ヶ谷をはじめ、前田敦子、中尾明慶、香里奈、毎熊克哉、野村周平、三浦大輔監督が登壇。共演者が撮影における藤ヶ谷の様子を証言すると共に、藤ヶ谷は本作への手応えをたっぷり語った。
2018年に上演された三浦のオリジナル舞台を、三浦の監督&脚本、藤ヶ谷主演という再タッグで映画化した本作。藤ヶ谷演じるフリーターの菅原裕一が、ほんの些細なことから、恋人や親友、先輩、後輩、家族などあらゆる人間関係を断ち切っていく姿を描く逃避劇だ。
バツが悪くなるとその場しのぎで逃げだしてしまうクズ男を演じた藤ヶ谷は、「早く皆さんに届けたかった。すごくうれしい。舞台から考えても時間が経っていますので、うれしさと寂しさが入り混じっている感じがあります」と長く向き合った作品の門出を迎え、率直な想いを吐露。映画を観た人からは「こんな藤ヶ谷太輔は見たことがなかった」と言われることが多いそうで、「その言葉がすごくうれしかった。三浦さんに引きだしていただいた」と三浦監督に感謝していた。
三浦監督は何度もテイクを重ねながら撮影をしていくことで知られており、キャスト陣は過酷な日々だったと口を揃えた。三浦監督は「これがヒットしたら続編という話もあるかな」と続編に意欲をのぞかせたが、「藤ヶ谷くんは『ホノルルだったらやる。ホノルルで逃げたい』と言っている」と明かす。藤ヶ谷は「“イン・ホノルル”だったらやります。国内だったらやりません」と及び腰で、さらに司会が「続編やりたい方は?」と尋ねると、キャスト陣は目を逸らすようにして意思表示をして、これには三浦監督も苦笑い。
野村が「僕、やりたいです!」と手を挙げたが、「監督を変えて。是枝(裕和)さんで」とまさかの監督交代を希望した。藤ヶ谷も「是枝監督だったら僕も参加したいです」と乗っかり、三浦監督は「じゃあ、是枝さんで続編を。脚本は書かせてもらおうかな…」と謙虚にコメント。現場でキャスト陣を追い込んだ監督がいじられる展開となった。
「撮影の序盤に、2日くらい撮影現場に行った」という毎熊は、「まだこの先(撮影)があるという時に、藤ヶ谷さんの追い込まれ方がすごかった。ちょっと心配になった。今日会ったら復活していたので、安心しました」と回想。前田も「記憶に残っていないくらい、大変だった」と現場の様子を振り返り、「藤ヶ谷さんがげっそりしていて驚いた。子鹿のようにげっそりされていた」と証言。藤ヶ谷は「痩せていましたね。三浦組に一生懸命に取り組むと、勝手に痩せます。(完成した)映像を観て、こんな感じだったんだと思いました」と、追い込まれていく役柄と自分自身が、自然と重なっていった様子だ。
とはいえ、大変な撮影を乗り越えた藤ヶ谷は「この映画に関わってくださった皆さんに、感謝の気持ちでいっぱいです。僕たちの新しい一面、表情を引きだしてくださった三浦監督に感謝を伝えたい」と充実感もたっぷり。「観てくださった方の人生のなかで、観てよかった映画ベスト10に入り続けたらいいな、入ったらいいなと。多くの方の記憶と心に残る映画になっていると思う。この映画を長く愛してあげてください」と心を込め、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝