3Dリマスター版『タイタニック』は3時間14分すべてが見どころ!制作背景や注目演出まで徹底レビュー
2月10日時点で、世界興収ランキング歴代4位の大ヒットを記録している『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(公開中)で、あらためて最強ぶりを見せつけたジェームズ・キャメロン監督。彼を世界の頂点に押し上げた名作『タイタニック』(97)が、4Kリマスターされた3D版『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』として公開中だ。制作背景から世界に与えた影響を振り返りつつ、3Dリマスターの大スクリーンで鑑賞することにより見えてくる、本作が長きにわたり名作といわれる所以をレビューしていく。
”ハリウッド史上もっとも愛されている映画”の誕生秘話
97年に初公開された『タイタニック』は、世界中で当時の興行成績を書きかえる大ヒットを記録。現在は世界興収ランキング歴代3位、日本ではいまだ洋画部門で歴代興行成績トップの座を保っている。ちなみに本作のワールドプレミアは、東京国際映画祭で行われた。第70回アカデミー賞では歴代最多タイの14部門でノミネートされ、作品賞や監督賞を含む歴代最多タイの11部門でオスカーを獲得。評価込みで考えれば、ハリウッド史上もっとも愛されている映画と言ってよいだろう。
ご存じのとおり、本作は1912年に起きたタイタニック号沈没事故を題材にしたスペクタクル。それまでSF、アクション映画の作り手として知られていたキャメロンにしては、異色作と言ってもよい。キャメロンがタイタニック号に興味を持ったのは、海洋SF『アビス』(89)を制作中のこと。潜水艇のアドバイスを求めた海洋研究者が、たまたま海底に沈んだタイタニックを発見した人物だった。その数年後、事故をドキュメンタリータッチで描いた『SOSタイタニック 忘れえぬ夜』(58)を偶然に観たキャメロンは、先の研究者のことを思い出し、深海で眠る船体と当時の出来事をリンクさせればおもしろい映画になると考えた。現在と未来を結んだ『ターミネーター』(84)に通じる、キャメロンらしい発想で企画は動きだしたのだ。
貧しい画家の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)と、家名のため金持ちに嫁がされるローズ(ケイト・ウィンスレット)。偶然タイタニック号に乗り合わせたふたりがロマンスを展開する本作で、まず目を奪われるのが船の描写だ。詰めかけた群衆が見守るなかでの出港シーンは、その名のとおり巨神(タイタン)のような巨体のスケール感はもちろん、海中で砂を巻き上げ回り出すスクリューや湾内で大型船を曳航するタグボートの姿までこと細かく描写。スクリーンで見ると、テレビでは見落としがちな細部まで作り込まれているのがよくわかる。当時の情景をひとつ残らず再現しようという、キャメロンの意気込みが伝わってくるようだ。
その後も映画は船長や航海士たちが指示を出す操舵室や巨大なピストンが上下する機関室、等級ごとに違う客室内部、豪華なホールからデッキまで、船内の様子もくまなく紹介。船の大きさだけでなく、ジャックとローズの格差を知らしめ、後半の沈没シーンでの動線をわかりやすくする伏線にもなっている。直接的なセリフに頼らず、映像で状況をこと細かに語るキャメロンらしい演出だ。