スピードワゴン小沢一敬&佐井大紀監督が語り合う、寺山修司の魅力。1967年のドキュメンタリーをいまリブートした理由とは?
劇作家の寺山修司が構成を担当し、1967年に放送されるや抗議が殺到するなど大きな問題となったTBSドキュメンタリーを半世紀ぶりによみがえらせた『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』(2月24日公開)。本作の公開直前イベントが2月9日に東京都内で開催され、小沢一敬(スピードワゴン)と佐井大紀監督が登壇した。
「日の丸の赤はなにを意味していますか?」「あなたに外国人の友だちはいますか?」「もし戦争になったらその人と戦えますか?」と街ゆく人々に挑発的なインタビュー行ったドキュメンタリー作品「日の丸」を、現代によみがえらせた本作。本作が初ドキュメンタリーとなる佐井監督が、「現代に同じ質問をしたら、果たして?」との思いから街頭に立ちインタビューを敢行。1967年と2022年の二つの時代を対比させることによって、「日本」や「日本人」の姿を浮かび上がらせようとする。
年間100冊以上の本を読むという芸能界きっての読書家で、「寺山修司さんは子どもの時から好き」「寺山さんの詩集も持ち歩いて、友だちができたらあげたりもする。10代の時にどハマりして、この人みたいに飄々としていたいなという影響を受けた」という小沢。本作を鑑賞して「寺山さんがこういう番組を作られていたことは知らなかった。いろいろな意味でおもしろい体験をさせていただいて、うれしい時間でした」と、刺激的なひと時になった様子。寺山の持つ“軽やかさ”が好きだという小沢だが、「メッセージ性もそうだけれど、『世の中にはこういう見方もあるよね』という(ものを提示する)、実験、挑戦をしているところが、寺山修司さんらしいなという感覚で観た。そういった寺山さんの実験、挑戦を、今回は佐井監督もされたのかなと思った」と前作からのチャレンジ精神を受け継いだ作品だと話した。
「ありがとうございます」と喜んだ佐井監督は、本作をつくりあげて体感した寺山の魅力について、こう語った。「“日の丸”というすごくセンシティブな題材すらも材料として取り込んで、自分のクリエティブにしていく。そういった寺山さんのユーモアと、社会に対して刃を突きつけるかのようなところにかっこよさを感じる」。
さらに本作で寺山がやりたかったことについて、佐井監督は「“日本”や“国家”という大きなものを捉えようとしたというよりも、(番組を)観る人を当事者として巻き込んで、みんなの心を揺れ動かしていった。揺れ動かすための、大きいクエスチョンマークになること。それこそが、寺山さんが生涯を通してやりたいことだったのかなと感じました」と分析。すると小沢も「僕が好きな寺山修司は、知的好奇心という意味でのおもしろいものって、視点を変えれば、世の中にはたくさんあるという気づきをくれること」と彼の視点の持ち方に共感を寄せつつ、「本作も、答えはないけれど『お前らはどう思う?』ということをやっているんだと思う。寺山は、世の中の楽しみ方をいつも教えてくれる人だと思っている」と熱弁していた。
またなぜいま「日の丸」をリブートしたのかという問いについて、佐井監督は「1967年は、東京オリンピックと大阪万博に挟まれている時期。2022年も、ちょうど東京オリンピックと大阪万博に挟まれている。世の中は全然変わったけれど、定点観測的に比較したらどんなことが浮かび上がってくるんだろうという興味があった。だからいまやらないといけない、いまやることに意味があるなと思った」と告白。「“日の丸”というセンシティブで普段はあまり語ろうとしないようなテーマを扱っている映画ですが、この映画を観た帰りにお酒でも飲みながら『日の丸どう思う?』『日本どう思う?』とラフな会話ができるようなきっかけになれれば。気軽に観ていただいて、気軽に、自分の考えを持つきっかけになれたら」と願っていた。
取材・文/成田おり枝