有村架純、素顔はまじめで根暗?『ちひろさん』で新境地「ここまで近づかせてもらえない役は初めて」
安田弘之の同名漫画を実写映画化した『ちひろさん』の初日舞台挨拶が2月23日に新宿武蔵野館で開催され、有村架純と今泉力哉監督が登壇。元風俗嬢でいまは小さなお弁当屋さんで働く主人公を演じた有村が、「ここまで役に近づけない、近づかせてもらえない役どころは初めて」と告白した。
本作は、主人公のちひろ(有村)が、とある海辺の町のお弁当屋さんで働きながら、心に傷や悩みを抱えてうまく生きることができない人々と交流していく姿を描く人間ドラマ。誰に対してもわけ隔てなく接するちひろの元には、孤独を抱えた人々が吸い寄せられるように集まり、ちひろはそんな彼らとご飯を食べ、言葉をかけながら、それぞれの孤独と向き合い進んでいけるように背中を押していく。
いままでは「役に寄っていく、もしくは役を引き寄せるようなアプローチの仕方で撮影をさせていただいていた」という有村。しかしながら本作で挑んだちひろ役は、「自分が近づくとまた離れて、近づくと離れて…と磁石のようにくっつけないというか。そういう感覚が最後まであった」となかなかつかめない役どころだったと話す。イベントや取材などで役名を口にする時にも「“ちひろ”というよりも、“ちひろさん”という感じがしっくりくるような、特別な存在だった」そうで、ちひろ役にぴったりな人が「もっと他にいたんじゃないかな」と正直に打ち明けて会場の笑いを誘った有村。「でも役目を果たしたかったので、懸命に撮影の日々を過ごしました」と力を注いだ日々を振り返っていた。
すると今泉監督は「(演じる役柄と)距離があるというのは、不思議な感覚だと思う」と口火を切り、「有村さんがつかめない距離なりに、ずっとちひろさんを、尊いもの、届かないものとして扱ってくれていたから、このちひろさんになったのかなと思う。役をつかんでしまうと、どこか説教くさくなったり、偉そうになったりするような役。他の人がちひろさんが演じていたら、もっと堂々としたキャラクターになっちゃっていた可能性もある」と役柄をつかめないことが、いい作用をもたらしていたと分析。
さらに今泉監督は「ちひろさんって、変な大人で常識に縛られずに生きている人。ひょうひょうとしていて、適当な大人という印象があったんですが、取材などを通して、逆にまじめな人だと思うようになった。有村さんのまじめな部分と、ちひろさんがすごくリンクした。有村さんが言うほど、遠くはないと思っています」と語る。
WOWOWドラマ「有村架純の撮休」やCM撮影などでも有村とタッグを組んできた今泉監督だが、その撮影の間にも「『ちひろさん』の漫画、読みましたか?と確認したり、(原作者の)安田さんが(ちひろ役を演じる人は)『根明か、根暗かで言うと、暗い人のほうがいい。そこが必須条件です』と言っていますが、どうですか?と聞いたら、有村さんが『そこは大丈夫です』とおっしゃっていた」と本作についていろいろな話し合いをしてきたことを笑顔で回想していた。
23日より、Netflixでの世界配信&劇場公開となった本作。有村は「劇場は、特別な空間で、非日常的な気持ちが味わえる場所だと思う。“映画館に行く”という、日常の楽しみの一つになれる場所。特別な時間が過ごせる」と劇場で観るよさを語りつつ、「Netflixだと何度でも観返せて、またその役に自分が好きな時に会える。そういう配信の楽しみ方もあるなと思います」とNetflixでの楽しみ方もたくさんあるとコメント。「(劇場)公開と同時にたくさんの方々に観ていただける機会もそうそうないので、私自身もこの作品がどのように届くか楽しみにしています。たくさんの方に届けばいいなと思っています」と願いを込めていた。
取材・文/成田おり枝