『マジック・マイク』最終作でソダーバーグ監督が目指したのは?「『ウエスト・サイド物語』に匹敵する作品にしたかった」
「オーシャンズ」シリーズのスティーヴン・ソダーバーグが、元ストリップダンサーだったチャニング・テイタムの経験に基づいた映画『マジック・マイク』(12)を手掛け、2人でダンス映画を芸術の域に引き上げてからほぼ10年。続編『マジック・マイクXXL』(15)では製作総指揮に回ったソダーバーグだが、最新作『マジック・マイク ラストダンス』(公開中)では再びメガホンをとり、テイタムとともに“ラストダンス”の名にふさわしい“大花火”を打ち上げた。ダンサーたちの圧倒的なパフォーマンスにうなる本作を手掛けたソダーバーグ監督を直撃し、本作に懸けた想いについて聞いた。
落ちぶれたストリップダンサー、マイク(チャニング・テイタム)が、資産家のマックス(サルマ・ハエック)からの依頼を受け、ロンドンへやってくる。その依頼とは、歴史ある劇場で一夜限りのストリップステージを成功させることだった。マイクは世界中からかき集めた選りすぐりのダンサーたちとともに誰も見たことのない究極のステージを作り上げようとする。
「“ダンスを通じて物語を語る”ということを目指しました」
再び監督として参加した理由についてソダーバーグ監督は「2作目の『マジック・マイクXXL』を製作したあとにチャニング・テイタムとリード・カロリン(脚本家)と振付けのチームがライブショーを作りました。それはキャバレースタイルのショーで、ラフなバージョンはいくつか観ていましたが、最終的にロンドンに行って完成した舞台を観たら、そのショーが本当にすばらしくて驚きました。それで、すぐに私のチームを呼んだのです」と、テイタムたちが手掛けた舞台「マジック・マイク・ライブ」を観て感銘を受け、本作の制作に至ったという経緯を明かしてくれた。
「私はその時、ブロードウェイのミュージカルバージョンを実現させたいと考えましたが、その前にまずは映画にしようと思いました。それで“どのようにして主人公がこのライブショーを作るに至ったのか”というストーリーを作ろうとして話しあったのです。ちょうど『オール・ザット・ジャズ』のボブ・フォッシー(=ジョー・ギデオン)役を、チャニング・テイタムが演じるマイクとして進めたいと考えました。『マジック・マイク・ライブ』には本当に感激したので、私もその一部になりたいと思って映画にしたのです」。
さらにソダーバーグ監督は「マジック・マイク・ライブ」について「テイタムは大きなアイデアを持っていましたが、それは『ストリップダンサー映画を変える』というもので、昔から変わっていません。そのジャンルを広げて変えるためにはどうするべきかを考えた時、“ダンスを通じて、共感や感情を伝える”という結論に至り、それに続いて“ダンサーを中心にショーを作る”ということも決めました。つまり、踊ることができないストリップダンサーの話ではなく、実力のあるダンサーがストリップの動きを取り入れてダンスを踊るショーにしたいと思ったのです。それは、“ダンスを通じて物語を語る”ということでした」とテイタムが目指した着地点について語る。
「テイタムたちはダンサーと話し合い、それぞれの才能を見極めて、ショーに取り入れていきました。ダンサーたち1人1人に才能を披露できる時間を設け、そのなかにはピアノを弾く人や歌を歌う人、ドラムを叩く人もいました。そしてダンサーたちがリアルな人間であってパフォーマーであるということを見せるショーを作り上げていったのです。私にとっては、いろいろな要素が1つのショーにすべて入れ込まれているものを初めて観たし、すごく新しいことだと思いました。利己的な理由ではあるのですが、私も関わりたいし、私自身の作品を作りたいと思って参加した次第です」。
ソダーバーグ監督はこれまでのシリーズ2作をこう振り返る。「とても幸運なことに、『マジック・マイク』から文化的なシフトはありましたが、いまでもこの映画は古臭くなっていません。それは1作目を手掛けた時、私たちはかなり前向きで非常に進んだ考えを持っていたつもりでしたし、できる限り、ストリップダンサーを描く時に陥りがちな罠(男女関係、セクシャリティ等)にハマらないようにと、細心の注意を払って作ったからだと思います」と述懐。「そして2作目はグレゴリー・ジェイコブズが監督をして、主人公マイクを違う方向に持っていきました。それによって、キャラクターたちを良い意味で広げてくれたことが私はうれしかったです。そして3作目では、いままで作り上げてきた世界がさらに続いていて、その上に成り立っているということを見せたいと思いました。だからこそ、マイクをアメリカから外に出して、新しい場所ロンドンへ行かせることは、映画にとって必要でした」。
長年組んできたテイタムについては「核となる部分は変わっていなくて、2010年に出会った時と同じように、非常にリアルで誠実な人だと思います。もちろん、彼はいろいろな人生経験をしてきていて、物事に対する考え方は変化していると思いますが、それは私たち全員にも言えることですから」と語った。