似た者同士の愛『わたしの幸せな結婚』、爽やかな感動『シャザム!~神々の怒り~』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、名作ドラマを送りだしてきた塚原あゆ子が、豪華キャストで人気小説を実写化するファンタジーラブストーリー、見た目はオトナ、中身はコドモなヒーローの活躍を描く人気アクション第2作、フロリアン・ゼレールが、自身の戯曲をもとに、親子の心の距離を映しだすドラマの、バラエティに富んだ3本。
原作のイメージを裏切ることなく、鮮やかに体現…『わたしの幸せな結婚』(公開中)
明治、大正期を舞台にしたクラシカルな和風シンデレラストーリー×特殊能力のバトルアクションの組み合わせで、多くの読者を夢中にさせている顎木あくみの大ヒット同名小説(そして、高坂りとによるコミック版)を「MIU404」、「最愛」などの名作ドラマを手がけてきた塚原あゆ子監督が実写映画化。薄幸のヒロイン、斎森美世を今田美桜、冷酷無慈悲と噂される名家の当主、久堂清霞を目黒蓮が演じ、それぞれビジュアル、雰囲気ともに、原作のイメージを裏切ることなく、鮮やかに体現しているのが嬉しい。
名家の生まれであるにも関わらず、実母を幼い頃に亡くして以来、継母と異母妹、実父からも虐げられ、政略結婚を命じられた美世と、心を閉ざして生きてきた清霞は、実は意外と似た者同士。コミュ障な2人が不器用ながらも少しずつ距離を縮めていく姿は愛おしく、清霞の優しさに触れた美世のうれし涙には、ついもらい泣きしてしまう。この2人の王道ラブストーリーを縦軸に、実写ならではの壮大なスケールで描かれるアクションやファンタジー要素を横軸にした展開は、エンタメ作品としての満足度もたっぷり。特に美世の“異能”に関する描写はコミック版より先行しており、そうだったんだ…!と得した気分に。現在、原作の物語はまだまだ続行中で、本作のラストでも続編を匂わせている。2人の運命の恋の行く末が気になって仕方ない。(映画ライター・石塚圭子)
子どもに観せたいヒーロー映画…『シャザム!~神々の怒り~』(公開中)
心は少年、身体は大人の半人前スーパーヒーロー、シャザムが活躍するDCコミックスを原作としたシリーズ第2作。前作のラストでヒーローに変身する能力をグループホームで生活する仲間=兄弟たちに分け与えたことで、ヒーローチームとなったシャザムたちは、子どもだからちょっと抜けている部分がありつつも、なんとかフィラデルフィアの街を守っていた。そんな最中、彼らは地球全体へ影響を及ぼしかねない危機的な状況に陥り、シャザムは信頼できる仲間=家族とともに、世界を救うべ女神たちに立ち向かう。
神の力を得たシャザムと3姉妹も女神との戦いを軸にしつつ、前作に引き続き今作でも“家族愛”がテーマとして描かれる。孤児を保護するグループホームで生活するなかで、血はつながらないながらも共に過ごす“家族”の存在とヒーローとして自覚を同時進行的に描くハートフルな物語は健在。成長要素も少しだけ大人びているのもポイントとなっている。コメディ色が強い明るく楽しい作風も含め、今作も“子どもに観せたいヒーロー映画”として、爽やかな感動を与えてくれる1作だ。(映画ライター・石井誠)
ヒュー・ジャックマンがキャリア最高レベルの熱演をみせる…『The Son/息子』(公開中)
両親の離婚は、ティーンエイジャーにどんな影響を与えるのか。本作の場合、やや極端な例で示しながら、家族関係の難しさでじわじわと胸を締めつけてくる。17歳の息子ニコラス(ゼン・マクグラス)の心は揺れまくり、家を出て行った父を恨んでいるわけでもなく、その父と再婚相手の間に生まれた赤ん坊、つまり弟には自然な愛情を抱いたりして、現状になじんでいるかに見える。しかし「体が2つに引き裂かれるようだった」と彼が吐露するように、人には受け止めきれないものもあるのだと、本作は伝える。
大統領選挙の参謀チームに誘われるほどの弁護士でも、別れて暮らす息子の苦悩はなかなか解決できない。仕事先のインターンの青年に自分の息子を重ねるなど、さりげない切実なシーンが積み重なっていく。そんな彼に、超然とした態度でシビアなアドバイスを与えるのが父親。短い登場ながらアンソニー・ホプキンスの存在感に圧倒されるはず。そして終盤は、ヒュー・ジャックマンがキャリアでも最高レベルの熱演をみせる。観終わって、想像とは違った後味に包まれる人もいるかもしれないが、それも本作独自の持ち味だと受け止めたい。(映画ライター・斉藤博昭)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼