【第95回アカデミー賞】主演女優賞は『TAR/ター』のケイト・ブランシェットが『エブエブ』のミシェル・ヨーに惜しくも敗れる
現地時間3月12日(日本時間3月13日)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催中の第95回アカデミー賞授賞式。主演女優賞は、『TAR/ター』(5月12日公開)でストイックで傲慢かつ繊細な天才指揮者役を演じたケイト・ブランシェットが有力視されていたが、『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(公開中)のミシェル・ヨーに敗れた。ブランシェットは『ブルー・ジャスミン』(13)で同賞を受賞、助演女優賞を獲得した『アビエイター』(04)も含め、3度目のオスカー受賞がかかっていた。
ブランシェットが演じるのは、世界最高峰のオーケストラの1つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初の首席指揮者に任命されたリディア・ター役。圧倒的な地位を手にしたターだったが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーとで、新曲の創作に苦しむ。そんななかで、かつてターが指導した若手指揮者の訃報が入り、ターにある疑惑がかけられる。『イン・ザ・ベッドルーム』(01)や『リトル・チルドレン』(06)のトッド・フィールドが監督と脚本を務めた。
4度目となるゴールデン・グローブ賞、ヴェネチア国際映画祭女優賞、全米、NY、LAの批評家協会賞といった名立たる賞を多数受賞してきたブランシェット。脚本も手掛けたフィールド監督が「唯一無二のアーティスト、ケイト・ブランシェットに向けて書いた」というター役だが、まさにブランシェットはその期待をも上回る存在感を発揮したのではないか。残念ながらオスカー受賞とはならなかったが、クライマックスでの神がかったブランシェットの怪演は圧巻なので、ぜひ映画館で観ていただきたい。
文/山崎伸子
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