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『AIR/エア』がマット・デイモン&ベン・アフレック初の“共同製作”映画なワケ「この映画は、僕たちの哲学的な野望とよく似ていた」

インタビュー

『AIR/エア』がマット・デイモン&ベン・アフレック初の“共同製作”映画なワケ「この映画は、僕たちの哲学的な野望とよく似ていた」

ベン・アフレック、ヴィオラ・デイヴィス、マット・デイモン
ベン・アフレック、ヴィオラ・デイヴィス、マット・デイモン

映画は、3月にテキサス州オースティンで行われたSXSW(サウスバイサウスウエスト)映画際でプレミアが行われた。昨年のこの映画祭で、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)が初披露され、年間を通じ大ヒットとなったのも記憶に新しい。SXSWに初参加したデイモンは観客の反応を生で感じ、「『これはイケるぞ!』と。本当にすばらしかったです。いままでたくさんの映画祭に参加してきたけど、SXSWではみんながこの映画をとても楽しみにしているような感じでした。会場にはすばらしいエネルギーが溢れていました。あの光景は決して忘れることはないでしょう、絶対に」と、手応えを感じたそうだ。

「手応えを感じた」と語る、SXSW(サウスバイサウスウエスト)映画際にて
「手応えを感じた」と語る、SXSW(サウスバイサウスウエスト)映画際にて

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』が作られたのは1997年。ハーバード大学在学中のマット・デイモンが書いた草稿を幼なじみのベン・アフレックに見せ、共同で脚本を執筆した。ガス・ヴァン・サントが監督したこの作品で、当時18歳だったデイモンとアフレックはアカデミー賞脚本賞を受賞している。『AIR/エア』を作ろうと思ったきっかけも、「まだ俳優と監督として一緒に仕事をしたことがないので、2人でやるのにいい企画だと思った」とデイモンは語り、いままでのキャリアで最も楽しい経験だったと思い返す。アフレックとの友情が、デイモンのクリエイティビティと勤労意欲に火を付けた。「僕たちが年をとって、より広い視野と知恵を持つようになったからだと思います。僕らはもう若くはないし、このような状況が永遠に続くとも思いません。毎日仕事に行けることにとても感謝しています。そして、自分たちの仕事をこれほどまでに愛し、お互いをこれほどまでに信頼し、一緒に仕事ができることに感謝しています。これは完全に夢の結晶です。40年来の親友を持つということは、共通する基準を持っているということ。クリエイティブな面で意見が合わないことがあると、お互いのアイデアを試してみたいと思うんです。なぜなら、『お前がそこまで強く思うのなら、俺はおそらく間違ってるんだろうな』という。そういう信頼関係があって、一緒だと仕事が本当に楽しくなるんです」。

言わずとしれた名コンビ。SXSW(サウスバイサウスウエスト)映画際にて
言わずとしれた名コンビ。SXSW(サウスバイサウスウエスト)映画際にて

『AIR/エア』は、彼らが新たに立ち上げた制作会社アーティスト・エクイティの第1弾作品である。そして、これは偶然ではない。ベン・アフレックは「この映画は、僕たちがやろうとしていた哲学的な野望と、テーマ的によく似ていたんです。ある企業が、現代史における最も偉大なアスリートへの報酬支払い方法と、彼のアイデンティティと商品とを結びつける方法を変える決断を下した脚本を読みました。本当に感動的でした」と企画の発端を思い返す。


「ナイキは、“アスリート”という概念を取り入れた最初の企業です。ナイキがやりたかったことは、ルールを少し変え、プロセスの進め方を変え、最終的には報酬のあり方を変え、より多くの責任と報酬を人々に与えることでした。僕らの新会社は、スタッフとキャストの報酬体系を変え、僕らが目指す仕事に役立つやり方で映画を作ることを目的としています。無駄を省き、プロセスを合理化し、重要なものだけを残す。僕の長年の経験と、ほかの監督たちと話し考えた結果です」と語る。

 『AIR/エア』より
『AIR/エア』より[c]AMAZON CONTENT SERVICES LLC

21世紀のいまでも、1930~40年代に作り上げられたハリウッドの映画製作システムから、撮影プロセスや指揮系統、報酬体系などが受け継がれている。映画の中でマット・デイモン演じるソニーが、マイケル・ジョーダンの母デロリスに「そういうものなんです」と道理を説明したように。「あの契約がマイケルの人生を変えただけでなく、アスリートたちに何千億ドルもの波及効果をもたらしました。まだ同等だとは思いませんが、僕らの会社も変化への一歩を踏み出せたと思います。優秀な人材がより多くの報酬を得られる方法を考え、彼らを認め評価し、コラボレーションに価値を見出す。そうすることで、どのように他者と関わり共感を生み、オリジナルで興味深い物語を作る制作会社だと認識してもらえれば」。そして、ベン・アフレック監督は映画に対する飽くなき野望を口にする。「心に響くような、なんらかの影響を与えられる映画が作りたかったんです。映画という芸術のすばらしいところは、最高の感動を伝えてくれること。だからこの仕事が好きなんです。エンターテインメントであり、大好きな仕事で、楽しい仕事。だから映画館に行くのも大好きです。映画館に来てくれるお客さんにも、そういう体験をしてほしいと願っています」。

取材・文/平井伊都子

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