『AIR/エア』がマット・デイモン&ベン・アフレック初の“共同製作”映画なワケ「この映画は、僕たちの哲学的な野望とよく似ていた」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『AIR/エア』がマット・デイモン&ベン・アフレック初の“共同製作”映画なワケ「この映画は、僕たちの哲学的な野望とよく似ていた」

インタビュー

『AIR/エア』がマット・デイモン&ベン・アフレック初の“共同製作”映画なワケ「この映画は、僕たちの哲学的な野望とよく似ていた」

世界で最も有名なスニーカーの誕生秘話が、ベン・アフレック監督、マット・デイモン主演で映画になった。『AIR/エア』(公開中)は、稀代のバスケットボールプレイヤーであるマイケル・ジョーダンがまだ無名だったころ、彼がナイキ社と交わした異例の契約の裏側を描く。スポーツ選手の地位と未来を不可逆的に変えた大事件には、アフレックとデイモンの2人のフィルムメイカーの野望と希望が反映されている。

 『AIR/エア』は公開中
『AIR/エア』は公開中[c]AMAZON CONTENT SERVICES LLC

ナイキの創業者で社長のフィル・ナイト(現会長)をベン・アフレック、ナイキのバスケットボール契約担当のソニー・ヴァッカロをマット・デイモン、そしてマイケル・ジョーダンとの契約のフロントとなる母のデロリスをヴィオラ・デイヴィスが演じている。デイヴィスを指名したのは、マイケル・ジョーダン本人。アフレックは、この作品の企画が通るとまずジョーダンと面会した。「友達だなんておこがましいことを言う気はありません。彼を崇拝するファンの1人で、何度か一緒に過ごしたことがあります。彼や彼の家族が大切にしているものへの敬意として、彼が実際に出演しないにしても名前が出てくる映画を許可なしに作るのは、この世で最も愚かなことだと考えました。だから、もし彼が『やるな』と言うなら諦めるつもりでした」。ジョーダンは「ポートランド(ナイキの本社所在地)に行きたくはなかった。でも、赤いメルセデス(・ベンツ)のためなら一生靴を履く契約にサインするつもりだった」とアフレックに述べたそうだ。

ナイキのバスケットボール契約担当のソニー・ヴァッカロを演じる、マット・デイモン
ナイキのバスケットボール契約担当のソニー・ヴァッカロを演じる、マット・デイモン[c]AMAZON CONTENT SERVICES LLC

ジョーダンが母について語る口ぶりから崇高な敬意と愛情を感じ、「とても美しい物語だと思いました。これはデロリス・ジョーダンの物語であり、マイケルにとって母親はなにを意味するのか。そして彼女は、若いスポーツ選手やエンターテイナーが、金と名誉が幅を利かせる業界に入るにあたり、多くの母親が危惧することを象徴しています」と語る。そして、アフレックが「お母さんの役は誰が演じたらいいと思う?」と聞くと、ジョーダンはこう明言したそうだ。「『ヴィオラ・デイヴィスでなければならない』と言ったんです。なるほど。つまり、バスケットボールチームを結成するときになんと言うだろう?そうです、マイケル・ジョーダンでなければならない」。


アフレックと共に製作総指揮を務めたマット・デイモンはフロリダでのミーティングに同行しなかったが、アフレックからの電話で状況を把握した。「『おい、マイケル・ジョーダンはものすごく威圧的だったぞ(笑)』と開口一番。威圧的でアイコンであり、この映画の要でした。でも、彼が母親の話をした時、見たこともないような表情をしていたとベンが言うのです。それで、僕たちはこの映画がなんなのかを掴めたような気がしました。そしてベンは、『唯一の悪いニュースは、ヴィオラ・デイヴィスを獲得しなければならないことだ』と言いました。 ヴィオラ・デイヴィスがいなければ、この映画は作れない、と(笑)」。

ナイキの創業者で社長のフィル・ナイト(現会長)を演じる、ベン・アフレック
ナイキの創業者で社長のフィル・ナイト(現会長)を演じる、ベン・アフレック[c]AMAZON CONTENT SERVICES LLC

ベン・アフレック監督にとっても、ヴィオラ・デイヴィスをチームに迎えることは大きな意味を持つ。「いつかヴィオラが僕の映画に出てくれたら、監督として一段上に上がれるのではないかと野心を抱いていました。そして彼女はイエスと言ってくれた。僕が監督する映画だから出演してくれたんだと信じたいです。オファーする時に、『マイケル・ジョーダンがあなたに母親役を演じてほしいと言っています』と伝えてしまったけれども(笑)」。それを受けたヴィオラ・デイヴィスは、「デロリスの映像を見たら、まさに禅のごとく中立的な女性でした。静かで、安定していて。そういった精神やすべてを包み込むような静けさを演じるのは挑戦でした。私はいつも肩に力が入っているような人間だから(笑)。身に余る光栄であり挑戦でもあり、マットやベンと一緒に仕事ができてとてもうれしかった。ジュリアス(・テノン、実生活の夫が劇中でも夫役を演じている)といまでも撮影の時の話をしますが、最高の経験でした」と笑う。

マイケル・ジョーダンの母デロリスを演じる、ヴィオラ・デイヴィス
マイケル・ジョーダンの母デロリスを演じる、ヴィオラ・デイヴィス[c]AMAZON CONTENT SERVICES LLC

マイケル・ジョーダンを見初め、彼の可能性を信じ、フィル・ナイト社長をはじめとした社内外の人々を熱量で巻き込んでいくソニー・ヴァッカロを演じたマット・デイモンは、「この作品は、本当に“みんなのためにある映画”と思えるような物語を描いています。そして、昔はこのような映画を“フィールグッド・ムービー(良い気分になる映画)”と呼んでいました。映画館を出る時に心が弾むような、スキップしたくなるような、そんな気持ちになれる映画です。ベンと僕は子どものころからこのような映画を観て育ちました。大爆発が頻発するわけではないけれど、良い脚本と良い演技と、興味を惹かれるストーリー、映画を観たあとに心に残るキャラクターがあって、それらが映画館へ足を運ばせる理由です」と、作品の出来に満足気だった。

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