黒の組織が暗躍する『名探偵コナン 黒鉄の魚影』、雄弁な映像の連続『サイド バイ サイド 隣にいる人』など週末観るならこの3本!

コラム

黒の組織が暗躍する『名探偵コナン 黒鉄の魚影』、雄弁な映像の連続『サイド バイ サイド 隣にいる人』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、コナンと黒ずくめの組織の対決を描いた劇場版「名探偵コナン」第26弾、伊藤ちひろが抜群の映像美で人々の心模様を映しだすヒューマンドラマ、イランで発生した、娼婦を狙う実際の事件をもとに描いた社会派スリラーの、胸に迫る3本。

その命運を左右する“新技術"に秘められたドラマ…『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(公開中)

7年ぶりに「黒ずくめの組織」に焦点が当たる(『名探偵コナン 黒鉄の魚影』)
7年ぶりに「黒ずくめの組織」に焦点が当たる(『名探偵コナン 黒鉄の魚影』)[c]2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会 

サブタイトルの“黒“でピンと来た人も多いだろう。本作でスポットが当たるのはコナンの宿敵である「黒ずくめの組織」。テレビアニメでは先ごろ組織のNo.2である人物の正体が判明してSNSを賑わせたが、劇場版でフィーチャーされるのは2016年の『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』以来7年ぶり。おなじみの幹部陣だけなく潜入捜査組や本作オリジナルのメンバーにも見せ場があり、少なからぬ黒ずくめファンを大いに沸かせてくれそうだ。

そして今回のキーパーソンとなる灰原哀(声:林原めぐみ)もまた、黒ずくめの組織の一員。過去にも幾度となく素性を暴かれそうになりながら組織の魔手を交わしてきたが、ここでついに捕らわれの身に!?舞台は逃げ場のない海のド真ん中。誰が見ても絶望的な状況下で彼女の胸に去来する思いとは…。コナン史上最高にスリリングな灰原vs組織の攻防と、その命運を左右する“新技術"に秘められたドラマを、ぜひ劇場で!(映画ライター・ほそいちえ)

人々のエモーションが交錯していく…『サイド バイ サイド 隣にいる人』(公開中)

目の前に存在しない“誰かの想い”が見える青年を中心に物語は動きだす『サイド バイ サイド 隣にいる人』
目の前に存在しない“誰かの想い”が見える青年を中心に物語は動きだす『サイド バイ サイド 隣にいる人』[c]2023『サイド バイ サイド』製作委員会

『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)、『ナラタージュ』(17)などの行定勲監督の脚本を数多く手がけてきた(後者は堀泉杏名義)伊藤ちひろが、自らのオリジナル脚本を映画化した、『ひとりぼっちじゃない』(公開中)に続く2本目の劇場映画監督作品。本作は、坂口健太郎が演じる、そこに存在しない“誰かの想い“が見える青年、未山をめぐって展開する。けれど、ここであらすじらしきものに触れると、映画を観たときの純粋な心の波動が失われてしまうので敢えて書かない。冒頭のシーンから『ひとりぼっちじゃない』と同様に雄弁な映像が連続し、未山や彼と一緒に暮らしている詩織(市川実日子)、映画の鍵を握る莉子(齋藤飛鳥)といった人々のエモーションが交錯していく。

その心模様を邪魔するような、説明的なセリフやナレーションは逆に一切ない。ロケ地や画面の構図から色彩や光、音、衣裳やランプシェードに至る小道具まで繊細に、精密に設計された映像が、視覚がとらえる大切なものと、目には見えない(時には時空さえも超えたところに存在する)大切なものを感じさせ、心を気持ちよく揺らすのだ。最近は説明過多の“映画とも呼べない“日本映画が多いだけに、五感を楽しませてくれる映像の力を信じたこの映画は実に清々しいし、力強い。本作にも出演している井口理(King Gnu)が主演した『ひとりぼっちじゃない』と対になっているようなところもあるので、どちらも観ると、伊藤ちひろワールドの魅力と面白さがさらに増幅する。(映画ライター・イソガイマサト)


イランの実情に震撼させる社会派スリラー…『聖地には蜘蛛が巣を張る』(公開中)

事件を通しイランの実情を浮き彫りにした『聖地には蜘蛛が巣を張る』
事件を通しイランの実情を浮き彫りにした『聖地には蜘蛛が巣を張る』[c]Profile Pictures / One Two Films

北欧ダーク・ファンタジー『ボーダー 二つの世界』(19)で世界を驚嘆させた鬼才アリ・アッバシが、自身の母国イランで実際に起きた“娼婦連続殺人事件"を基に描いた衝撃作。その事件とは、2000年~聖地マシュハドで16人もの娼婦が次々と殺害されていったもの。映画は序盤から、殺人鬼“スパイダー・キラー"が街で娼婦を買うフリをし、自宅に連れ帰って殺しては捨てに行く詳細をリアルに映しだす。そう、本作は犯人捜しのミステリーではなく、いかに戦争帰りの妻子ある男が“街を浄化する"と、“高貴なる使命"を振りかざして殺人を重ね、それを一部の市民が英雄視するか、その“いびつな社会土壌"を鋭く照射、イランの実情に震撼させる社会派スリラーだ。

事件を追う女性ジャーナリストを主人公に据えることで、卑劣な犯人のみならず、警察の人間までがいかに女性を意のままに支配せんとするかを抉り、観る者のダメージを深くする。さらに白眉は、犯人逮捕後。犯人の妻子を含む人々の反応や世論、その裁判の行方に、ヒジャブを被らない女性を弾圧するイランの“いま“が重なり、その精神が脈々と受け継がれゆく様に背筋が凍る!(映画ライター・折田千鶴子)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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