【リレー連載第2回】「聖闘士星矢」に重なる生き様…本間朋晃が証明するパートナーの重要性「夢や目標に向かって進む人は出会いを大切にして！」

「奇跡は起きることを僕が証明していきたい」

2017年、試合で首を強打し中心性頸髄(けいずい)損傷と診断。四肢まひ状態となり寝たきりになった本間だったが477日で奇跡的な復帰を果たす。「ついさっきまで五体満足に動いていた体が、目と口しか動かなくなるなんて考えられない状況でした。でも、この状況は誰にでも起きるかもしれないこと。明日のことなんてわかりませんから。だからこそ悔いの残らない人生を過ごそうと心に誓いました。人生終わったと思ったし、体の痛みもすごくて。動かないのに痛みだけは感じるんです。でもそれより大きかったのは心の落ち込み。本当にきつかったです。なのに、いまの奥さんは、『大丈夫、大丈夫』って隣でヘラヘラ笑ってるんです。そんな状況で笑えるってすごいでしょ？彼女の笑顔にどれだけ救われたかわからないし、この笑顔に応えなければいけないという気持ちになりました」と妻のサポートに感謝。

「復帰後には『もう怪我はしないでね、私が泣いちゃうんだから』と言われて。もう悲しい涙は流させたくないと思いました。流させていいのは嬉し涙だけ。それに2歳の子どものためにもまだまだ現役でバリバリ頑張りたいと思っています」と心のよりどころの大切さにも触れた。

首の怪我をしたプロレスラーは多い。復帰戦を前に首の怪我と長期欠場の経験者でもある蝶野正洋から「(リングの上は)めちゃめちゃ怖いと思う」と告げられても半信半疑だったという本間だが、「リングに上がった瞬間、震えるほど怖かったのはいまでもはっきり覚えています。次に怪我をしたら(プロレスラーとして)アウト。次がないと思うとより怖さが込み上げてきました」と当時の心境を丁寧に解説。

しかし、リングに上がりファンの声援を浴びると「『応えなきゃ！』という気持ちになりました。胸いっぱいのプロレスをやりたいと思いました」と新たな決意をしたと明かした。本間が前を向いたのは、プロレスファンのためだけではない。「リハビリって本当につらいんです。いつ動くかわからないのに、同じようなことを繰り返す日々。僕が頑張って動けるようになることで、リハビリしている人たちにも希望を持ってもらいたいと強く思いました。奇跡は起きることを僕が証明していきたい、諦めたら終わりですから」と決心の理由を教えてくれた。

ガサガサ声は本間の代名詞。その特徴的な声を活かしてバラエティ番組でも活躍している。「試合でラリアットを喉に喰らったのが、この声の原因です。プロレスラーにはこんな声の人が多いけれど、最初はすごく嫌でした。人との会話では『は？』って聞き返されるし、試合中に感情が爆発して叫んでも、僕が声を出すだけで全部笑いに変わっちゃうんです。試合に集中できなくてすごく嫌な時期はありました。でも、この声じゃなかったら出会ってない仕事もあるわけで。嫌だったことがなにかのきっかけで『よかった』と思えるようになる。人生ってなにが起きるかわからないって思っています」とニッコリ。

得意技の「こけし」も、「披露した当初は無反応でした。派手さはないし『なにそれ？』って感じで。ずっと使い続けていた技を、新日本プロレスで『こけし』と名づけ使い続けていたら、徐々に認知されて、いまでは喜んでもらえる技に。何事もやり続けるって大事だと実感しました」と満足の表情を浮かべる。「絶対に諦めないこと」「やり続けることが大事」と積み重ねを大切にしてきた本間のターニングポイントであり、“The Beginning”となったのは「パートナーとの出会い」だ。「真壁さんとの出会いでプロレスのすべてが新鮮に見えて楽しくなりました。人生においては結婚も大きかったです。パートナーはすごく大事です。夢や目標に向かって進む人には、出会いを大切にし、よいパートナーと出会ってほしいです」。

「人生なにが起きるかわからない」と笑顔で語った本間。奇跡を起こし、マイナスなこともプラスに転換してきた本間の人生は、幾度もの挫折や苦悩に襲われながらも、決して諦めずに乗り越えてきた星矢の人生とリンクする。2人の生き様に触れれば「いまは苦しくてもいつか…」と勇気をもらえる人も多いはずだ。

取材・文/タナカシノブ