リゾート地で展開する、父と娘のまばゆい数日間…A24最新作は美しい情景にも注目
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(公開中)や『ザ・ホエール』(公開中)などの良質な作品を次々と世に送りだすA24が北米配給を行ない、第95回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた『aftersun/アフターサン』(5月26日公開)。このたび本作から、物語のもう一つの主人公とも呼ぶべきトルコのリゾート地の様子を収めた場面写真を独占入手した。
11歳のソフィが父親と2人きりで過ごした夏休みを、その20年後に父親と同じ年齢になったソフィの視点で綴った本作。普段は離れて暮らしている父カラムと、その娘のソフィ。ふたりは夏休みに陽光注ぐトルコのリゾート地を訪れ、カラムが旅行のために準備した家庭用のビデオカメラを互いに向け合っては楽しいひと時を過ごす。ソフィの背中に日焼け止めクリームを塗ってあげたり、大空いっぱいに舞うパラグライダーを眺めたり…そうした他愛もない一つ一つの瞬間が、やがて2人のかけがえのない夏の思い出へと変わっていく。
公開された場面写真には、かつてクレオパトラも訪れたという有名なスルタニエ温泉で泥風呂を楽しんだり、一面に広がるビーチを前に眩しそうに同じようなポーズを取ったり、夕陽を浴びながら会話を楽しむ2人の姿が。監督、脚本を務めたシャーロット・ウェルズ監督の実体験がベースとなった本作。「10歳くらいの頃、父とトルコに2週間滞在したことがあり、脚本を書く間、その休暇の記憶が繰り返し浮かんできました。その時に感じた楽しさや驚きを、物語に取り入れました」と語るように、美しい観光名所の数々は必要不可欠な要素となっている。
またソフィを演じたフランキー・コリオとカラムを演じたポール・メスカルは、撮影の2週間前に現地に入り、長い時間を一緒に過ごしたという。そうして培われた2人の関係が、限られた時間を大切に過ごす父娘の姿にさらなる真実味を与えてくれる。多くを語らずとも、誰しもの心の片隅に存在する大切な人との大切な記憶を揺り起こす本作。美しい情景の数々にも注目しながら、劇場のスクリーンで珠玉の物語を堪能してほしい。
文/久保田 和馬