ネタバレなしで「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」最新作をレビュー!パンパンに膨らみきった期待にたがわぬ傑作だ
待ちに待ったという言葉では足りないほど、待たされた感がある。そんなシリーズ最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(公開中)。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)をはじめ、マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)で度々顔を見せていたガーディアンズだが、直系のシリーズとしては、実に6年ぶりだ。
友情と努力、勝利…「週刊少年ジャンプ」の3大原則のエッセンスがある!
MCUのなかで、筆者が最も愛しているのが、このシリーズ。というのも、アメコミ映画のなかでも、とりわけ日本の漫画に近いノリを感じるから。なにしろ、ガーディアンズの面々はアメコミ・ヒーローのイメージからほど遠い。リーダーのスター・ロードこと、ピーター・クイル(クリス・プラット)はお調子者だし、ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)は冷淡だし、ロケット(声:ブラッドリー・クーパー)は無責任だし、ドラックス(デイヴ・バウティスタ)はバカだし、グルート(声:ヴィン・ディーゼル)は木だ。そもそも彼らの出会いからして獄中であり、彼らの最初の共同作業は脱獄だった。とてもじゃないが、ヒーローのすることではない。
誤解を恐れずにいえば、ガーディアンズは一芸、せいぜい二芸しかないポンコツぞろい。2014年の第1作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と2017年の第2作『ガーディンアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』では、そんな彼らがネビュラ(カレン・ギラン)、マンティス(ポム・クレメンティエフ)ら新しい仲間を得ながら団結して、宇宙の危機を救うという奇跡を成し遂げた。ヒーローではない彼らの友情と努力、勝利。「週刊少年ジャンプ」の3大原則のエッセンスが、そこにはあった。ちなみにMCUのなかでは図抜けて笑えるし、要所でエモく盛り上げて泣かせる点も、「ジャンプ」の多くの漫画を想起させる。
この6年の間に、多くのことが起きた。監督のジェームズ・ガンが過去の不謹慎ツイートを理由に解雇され、それに対してプラットら出演者たちが抗議するという事件は、シリーズが自然消滅してしまうのでは…という不安を抱かせた。幸いにもガン監督の復帰は1年足らずで発表されたが、すぐにコロナ禍がやってきたことで先行きが不透明になる。
その間、ガン監督はMCUのライバルであるDCユニバースの一編『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(21)の演出を手掛けたが、これが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのスピリットそのままで、観ていてうれしくなった。すなわち、はみ出し者たちが結束して世界の危機を救う物語。アクション映画に多く見られる展開ではあるが、ガン監督の目線は、はみ出し者だけではなく、社会から忘れられた弱者にも向けられる。世界を支え、救うのはヒーローではなく、そんな市井の人々なのだと言わんばかりに。
ガーディアンズでなければ成立しえない笑いと涙、そしてスリルのドラマ
前置きが長くなったが、本稿の主役『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』に話を移そう。これがもう、パンパンに膨らみきった期待にたがわぬ傑作!それだけでもうれしいが、やはりガーディアンズでなければ成立しえない笑いと涙、そしてスリルのドラマとなっているのだ。物語の始まりは、ガーディアンズの拠点となっている惑星ノーウェア。銀河を飛び越えてやってきた正体不明の刺客の急襲により、ロケットは危篤状態に陥ってしまう。ピーターをはじめとするガーディアンズの面々はロケットを救うために宇宙へと飛び立った。そこでハイ・エボリューショナリー(チュク・イウジ)と呼ばれる、強大な敵に立ち向かうことになる。
ロケットを急襲した刺客の正体は、前作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のエンドロール中、黄金の種族ソヴリンの女王アイーシャ(エリザベス・デビッキ)がガーディアンズへの復讐するために作りだしたという彼女の“息子”アダムである。母であるアイーシャのためにアダムは宇宙空間をも自力で飛び越える超人的な体力を駆使して、ノーウェアを襲撃したのだ。アダム&アイーシャ親子とハイ・エボリューショナリーの関係も気になるところ。
ハイ・エボリューショナリーは天才的な頭脳と破壊的な体力を秘めた男で、狂信的な一派を統率している。彼の目的は、ただただひたすらに平和な、完璧な世界を作ること。そのために彼は人間や動物たちを実験台にして、非人道的な研究に明け暮れている。ストーリーが進んでいくほど彼とロケットが過去の暗い因縁で結ばれていることが明かされていくが、それは見てのお楽しみとして語らずにおこう。