磯村勇斗、『波紋』で筒井真理子から刺激!「ご一緒したかった女優さん」光石研は磯村をライバル視!?
荻上直子監督のオリジナル最新作『波紋』の初日舞台挨拶が5月26日にTOHOシネマズ日本橋で開催され、筒井真理子、光石研、磯村勇斗、荻上監督が登壇。磯村が筒井との共演で受けた刺激について語った。
『かもめ食堂』(06)や『彼らが本気で編むときは、』(17)で知られる荻上監督が、歴代最高の脚本と自負する本作。主人公となるのは、新興宗教を信仰し、日々祈りと勉強会に勤しみながら一人穏やかに暮らす須藤依子(筒井)。長いこと失踪したままだった夫の修(光石)が帰ってきたことをきっかけに、自分ではどうにも出来ない辛苦に見舞われた依子が、押し殺した感情を爆発させていく姿を描く。磯村は、障害のある女性を結婚相手として連れて帰省してきた息子、拓哉を演じた。
『かもめ食堂』など温かな味わいの作品とはガラッと印象の違う映画となり、荻上監督は「『かもめ食堂』からどうやら私のことを『すごくいい人なんじゃないか。ものすごくお料理が上手な人なんじゃないか』と勘違いされている人がたくさんいる」とニヤリ。「そうじゃないぞ。こんなに意地悪で、邪悪なヤツなんだということを伝えたいと思った。そういう作品にしました」と茶目っ気たっぷりに本作に込めた想いを語り、会場を笑わせた。荻上監督とはこれまでにもタッグを組んだことがある光石は、「監督は本当に優しくて人間味のある人だけれど、一割くらいブラックなところがある」と証言。「それが今回は全面に出ていた」と楽しそうに話していた。
我慢を重ねる主人公の依子を演じた筒井は「私も我慢するほう」と役柄に共感する点も多かった様子。「依子は苦しいことがあっても、自暴自棄にはならない。以前、私も大変なことがいくつか重なって辛かった時がある。朝起きる時に、起きあがれないほどだった。でも『このままじゃいけない』と思って、ほふく前進でデスクまで行って脚本を書き始めました。そして書きあげた」という。
さらに「後日談があって」と目尻を下げた筒井は、「『この人が演じてくれたらいいな』と思っていた役者さんがいて。たまたま共演する機会があった時に、『ぜひこの主役をやってください。読んでほしい』と台本を持って行った。待てど暮らせど連絡がなくて、ついこの間、7年ぶりくらいにご一緒したらその方も気にしてくださっていた。『筒井さん、ごめん。まだ読んでいないんだよね』と言われて。2人で笑いました」とまだ保留状態だと明かしつつ、「そのように、絶望した時は自分にムチを打ってなにかをやっています」と自身の前進力について語る。
筒井演じる依子の息子役を演じた磯村は、「筒井さんは、ご一緒したい女優さんのお一人だった」と告白。共演が叶い、「本当にうれしかった。母から、刺激をたくさん受けました。お芝居が本当にお好きなんだなと感じた。その心を大切にしたいなと思いました」と感激しきり。また父親役を演じた光石については「もう(共演が)5回くらいですかね。いろいろなところで共演させていただいている。今回は父ということで、うれしかったです」と振り返ると、光石も「楽しかったね」と呼応。筒井は「光石さんは現場にいてくださると、必ず和ませてくれる。冬のコタツ。夏の扇風機」と一家に一台ほしい存在だと表現した。
すると荻上監督が「光石さんが『俺のポジションを取るなよ』と、磯村さんにおっしゃっていた」と現場の会話を暴露。磯村は「光石さんはバイプレイヤーで、いろいろな作品に出ていらっしゃる。僕もちょこちょこ出させてもらっているので、『俺の仕事取るなよ』って怒られた。怖かったです」と冗談混じりに語り、これには光石が「ライバルだと思って」と大笑い。磯村が「『なにを言っているんですか』と笑った。そんなこと絶対にありえない。ライバルじゃないですよ。恐縮です」と恐れ多いというと、光石も「磯村くんにファンの方に怒られますよ」と恐縮し、2人で笑顔を見せ合っていた。
取材・文/成田おり枝