『すずめの戸締まり』が終映。新海誠監督が原菜乃華&松村北斗に感謝!「たくさんの人の心や身体を動かす力が映画にはある」
『君の名は。』(16)、『天気の子』(19)に続く新海誠監督3年ぶりとなる最新作『すずめの戸締まり』が5月27日に劇場公開の終映を迎えた。TOHOシネマズ日比谷では「最後の戸締まり」と題した舞台挨拶が行われ、原菜乃華、松村北斗、新海監督が登壇した。
本作は日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女、鈴芽の解放と成長を描く冒険物語。1700人を超えるオーディションから選ばれた原がヒロインの鈴芽、扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年、草太役を松村が演じた。昨年11月11日に全国420館で公開となり、日本では動員が1100万人突破、興行収入は147.3億円を突破。海外では2023年3月から順次公開され、海外動員が3500万人を突破、全世界興行収入が420億円を突破するなど、世界中で“すずめ旋風”を巻き起こしている。
新海監督は第73回ベルリン国際映画祭(2月16日~26日開幕)への正式招待を皮切りに、ワールドツアーへ出発。現在までで欧米、アジア諸国を中心に9か国13都市へ訪れ、約2万人のファンと交流をした。新海監督は「本当は全部の国を一緒に行きたかった」と原と松村のほうを見ながら、「海外でも『すずめの戸締まり』を楽しみにしてくださっている方がたくさんいて、鈴芽のコスプレをしてくれている人がいろいろな国にいた。椅子になってしまった草太も、いまや世界中に兄弟がいる。あの椅子を手作りで作って持って来てくれる観客もたくさんいました。素敵な想いをたくさんしました」と海外での反響を喜んでいた。
公式サイトに寄せられた質問に答える場面もあったが、中学1年生から「原菜乃華さんの演技を見て、声優になりたいという夢を持ちました。声優の楽しさ、よさはなんだと思いますか」というコメントが寄せられると、原は「うれしくてニコニコしてしまいます」と照れ笑い。松村が「姿や形、年齢を飛び越えられる、稀な仕事。おもしろいなと感じました」と充実感をにじませると、新海監督は「椅子になったりもできる。そこは実写との違いですね」とにっこり。「僕が2人を選ばせていただいたのは、オーディションだった。作品は自分の子どものようなものだから、『聞けばわかる』という形でオーディションをやっていた。出会いだった」と振り返りつつ、「運や相性のようなものも大事な仕事。『こういう努力をすれば、こうなりますよ』とは簡単には言えないんですが、『なにかになりたい』という強い気持ちをずっとキープしてもらえれば、自分をいまとは違う場所まで連れて行ってくれると思う。いま持っている感情を大事にしてほしい」と声優業に夢を抱く中学生にエールを送っていた。
またステージでは「こういうふうに3人で壇上に立てるのも最後。なにか皆さんにお届けしたいと思って、即興のアフレコをさせていただきたい。短い台本を書いてきました」と新海監督が切りだし、本編後日談として新海監督が書き下ろした特別ストーリーの生アフレコを3人で披露することになった。
鈴芽と草太、草太の友人の芹澤が会話をするシーンのセリフを書いたそうだが、この日は芹澤役の神木隆之介が不在とあって、新海監督が芹澤を演じるという貴重な機会となった。松村も「これはものすごくレアですよ!」と興奮するなか、生アフレコがスタート。「環さーん!」という鈴芽の叔母への呼びかけから始まり、草太の「芹澤、お前がなぜ」、芹澤の「お前を心配して来てやったに決まってんだろ!」というセリフが続いた。さらに「2万円だよね。草太さんに貸している2万円を取り返しに来たんだよね、芹澤さん」(鈴芽)、「芹澤、お前また適当なことを。俺が貸したんだよな。だいたい2万じゃないよな、4万!」(草太)、「ああ…すまん」(芹澤)など、草太と芹澤の関係性の伝わるやり取りや、試験の話題など大学生らしい会話もあり、知られざる物語とキャスト陣の熱演に会場からは大きな拍手があがっていた。
本編では草太と芹澤が会話するシーンはなかったが、生アフレコを終えた原は「久しぶりに草太さんに会えた」、松村も「久しぶりに鈴芽に会いました」としみじみ。「皆さん、草太と芹澤はあんな感じでしゃべるんですよ。草太が普通の大学生なんだなと改めて感じた。すばらしい二次創作」と楽しそうに話していた。
いよいよ終映を迎え、松村は「今日で終映ということで寂しい想いもあるかもしれませんが、DVD&ブルーレイの発売も決まって、『すずめ』の新たな旅立ちなのかなと思う。そうするとまた『すずめ』を応援したくなる。これ以上に寂しい『すずめ』とのお別れはないと思うと、僕はすごく安心しています」とコメント。原は「『すずめの戸締まり』に携わらせていただいたこの1年は、私にとって宝物のような時間」と特別な経験になったという。新海監督は「全世界で4000万人以上の方が、わざわざ劇場まで足を運んでくれた。それだけたくさんの人の心や身体を動かす力が映画にはあるんだということを、ほっくん(松村)や菜乃ちゃん、周りのすばらしいスタッフや、皆さんから教えていただけた」と感謝し、「また数年後になんらかの形で、ここにいらっしゃる皆さんと再会できて『ただいま』『おかえりなさい』という声を掛け合えたら幸せ」と未来を見つめていた。
取材・文/成田おり枝