『怪物』永山瑛太演じる担任教師が生徒に暴力?衝撃の棒読み謝罪の本編映像が解禁
カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた『万引き家族』(18)の是枝裕和監督が、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」や映画『花束みたいな恋をした』(21)の人気脚本家、坂元裕二によるオリジナル脚本を映画化した『怪物』(6月2日公開)。第76回カンヌ国際映画祭で坂元の脚本賞と、独立部門「クィア・パルム賞」と合わせて2冠を獲得した本作から、このたび、永山瑛太演じる担任教師による衝撃の棒読み謝罪を切り取った本編映像が解禁された。
舞台は大きな湖のある郊外の町。ある日、学校で子ども同士によるケンカが起こる。よくあると思われた出来事は、子どもの母親、否定する教師らの食い違う主張によって、次第に社会やメディアをも巻き込んでいく事態となる。そんななか、嵐の朝に子どもたちが忽然と姿を消してしまう。安藤サクラ、永山、田中裕子ら実力派俳優と、子役の黒川想矢、柊木陽太のほか、高畑充希、角田晃広、中村獅童など多彩な豪華キャストが集結した本作。音楽は『ラストエンペラー』(87)で日本人初のアカデミー賞作曲賞を受賞し、『レヴェナント:蘇えりし者』(15)などを手掛けた故、坂本龍一が手掛けた。
解禁されたのは、息子の湊(黒川)が担任教師の保利(永山)から暴力を受けていることを疑ったシングルマザーの早織(安藤)が、学校へ説明を求めに行くシーン。校長室に案内された早織の前にぞろぞろと教師陣が入室。校長の伏見(田中)が担任教師の保利から謝罪をすると切り出し、保利が座ったままか細い声で「え~…」と話し始めると、隣に座っていた教頭の正田(角田)がすかさず「立って」と指摘する。保利は立ち上がりボソボソとしたぎこちない口調かつ、釈然としない態度で謝罪を述べ始め、早織に頭を下げる。すると周りの教師陣もタイミングを見計らったかのように一同に立ち上がり、保利とともに頭を下げて謝罪。あまりにもその場しのぎの様子が見て取れる学校側の対応に、早織は不信感を露わにするも、校長は「指導が適切に伝わらなかったものと考えております」と回答。早織は校長との対話を諦め、当事者の保利を問い詰めるが、目を見て真摯に問いかける早織に対し、保利はうつむいたままティッシュを取り出し、鼻を嚙み始める。そんななか、校長はまるで心がこもっていない弁明を繰り返す。シリアスな場面でありながら、役者陣の不自然な言動やしぐさに滑稽さも感じられる坂元ならではのエッセンスが散りばめられた一幕である。
脚本の執筆と登場人物のキャスティングは平行して行われたが、配役が決定することによって、坂元による脚本のキャラクターが膨らみ、物語がますますクリアになっていく過程を目の当たりにした是枝監督は「こうやって坂元さんは本を固めていくんだな」と感心したと言い、また自身の脚本と坂元による今回の脚本の違いについて「今回は構造も含めて、非常にしっかりとした物語ですよね。僕が普段書くものは“スライス・オブ・ライフ”なんです。日常を切り取り、描写して、その前後を想像させるようなものが多いから、それはたぶん物語ではない。今回も描写の力で持たせているシーンは多少あるけど、基本的に言えば劇映画だと思います。物語のラインが非常に強くて、太いんじゃないでしょうか」と語っている。
是枝監督と坂元という前代未聞の豪華コラボレーションで贈る『怪物』は、いよいよ明日公開となるので乞うご期待。
文/山崎伸子