生田斗真、白石和彌との対談で明かす『渇水』で感じた“熱量”「こんなにワクワクすることはない」
「本当の映画好きたちが撮る現場にいられることが幸せでした」(生田)
――そんな生田さんの表情や言動は、白石さんにはどんなふうに見えました?
白石「実は僕、クランクインの直前にコロナになっちゃって、現場にあまり行けなかったんです。でも、現場から『毎日雨が降ってます』という報告は受けていて、晴れが続かなければいけない内容なのに可哀想だな~って思っていたんです。生田さんも晴れていなければいけないシーンを雨天の日にごまかし、ごまかし撮影して、大丈夫かな?って思いながら演じられていたんじゃないかな。でも、そこはやっぱり、高橋監督を始めプロ集団がやっているから、カラッカラに撮れていた。生田さんの不安そうな表情や天候に恵まれない憤りみたいなものが、いくつもの問題を抱えた岩切の心象にいい具合に作用しているような感じもして。映画はいろいろな要素が複雑に絡み合ってできるものですけど、マイナスな条件も映画の力に変換できる高橋さんはやっぱり持っていると思いましたね。映画を愛してきた高橋さんが映画に愛された瞬間を見たような気がしました」
生田「この作品は16mmフィルムで撮っているんですよね。僕自身、全編フィルム撮影の作品は久しぶりだったというのもあるけれど『映画好きな野郎たちが撮っている映画の現場に自分はいまいるんだ!』という特別な感覚がありました」
白石「僕がコロナから快復してようやく現場に行ったのは、絶対に晴れてなきゃいけない滝のシーンだったんですけど、晴れ男の僕が行ったその撮影は晴れたんですよ(笑)。最高のプレゼントだなって勝手に思いながら、太陽の強い陽射しと滝の激しい水しぶきを浴びる生田さんを見させてもらいましたね」
――最後に完成した映画をご覧になった感想をお願いします。
白石「厳しい現実を描いているのに、本当に優しい作品になったと思います。僕が撮ったら、小説に近い、もう少しビターな終わり方をさせていたような気がするけれど、高橋さんは今回のエンディングを頑として譲らなくて。それだけに、完成した映画を観た時には『あっ、なるほど』って感心したし、すごく嫉妬しましたね」
生田「僕は熱量を感じました。制作陣のみなさんから『岩切はこういう人間だと思います』『岩切は僕の中にいるんです』みたいなことを言われた初対面の時の熱量が、そのまま投影されているような印象がすごくあって。僕自身、白石さんが監督業ではなく、初プロデュースという新しいことにチャレンジするこの作品で声をかけていただいて、こんなにワクワクすることはないなって思いました。またいつか、今度は監督と俳優として交われたらいいですね」
※高橋正弥監督の「高」は「はしご高」が正式表記
取材・文/イソガイマサト