「あなたの息子さん、いじめやってますよ」安藤サクラと永山瑛太が対峙する『怪物』緊迫の瞬間を切り取った本編映像が到着!
第71回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得した『万引き家族』(18)の是枝裕和が、『花束みたいな恋をした』(21)の坂元裕二と『レヴェナント:蘇えりし者』(15)の坂本龍一とタッグを組み贈る『怪物』(公開中)。このたび、母親役の安藤サクラと担任教師役の永山瑛太が相対する場面を収めた本編映像が解禁となった。
先日開催された第76回カンヌ国際映画祭にて脚本賞と独立部門「クィア・パルム賞」の2冠に輝き、公開日を含む週末の3日間の興行収入が325,419,020円を記録するなど多くの注目を集める本作。安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子らをはじめとする実力派と、瑞々しい黒川想矢と柊木陽太といった”怪物級”の才能を持つキャストが一堂に会し、それぞれの視線を通した「怪物」探しを繰り広げていく。
今回解禁となったのは、息子を愛する母親、麦野早織(安藤)に、子どもたちの担任教師である保利(永山)が衝撃的な一言を放つ本編映像。息子の湊(黒川)が保利に暴力を振るわれたと訴える早織だったが、保利はそれを認めず、謝ろうとしない。怒りが収まらない早織と保利のこれ以上の接触は逆効果だと判断した学校職員たち。彼らは保利を隠すことで2人を引き剥がそうとするが、早織はそれでも彼を追いかけていく。そんな彼女の様子を見た保利は、職員の制止を振り切り深いお辞儀とともに「どうもすみませんでした」と謝罪の言葉を告げる。怒りを通り越し「こんな学校がいる先生に…こんな先生がいる学校に子ども預けられないでしょ、この人辞めさせてください」と言い間違えをするほど呆れて訴える早織に対し、うす気味の悪い笑みを浮かべる保利。にわかに信じがたい保利の態度に怒りが込み上げ「私なにか面白いこと言ったかな、私なにかおかしいこと言ったかな」と詰め寄る早織が、さらに言葉を続けようとしたとき、保利が「あなたの息子さん、いじめやってますよ」と衝撃的な一言を放つ。そんな驚愕の発言に他の職員は慌てふためき、事を荒立てるような発言をした保利を「なに言ってんの?なにでたらめ言ってんの?」と睨みつける早織の姿を映し、映像は終わる。
気迫のこもった演技を繰り広げる安藤と永山のキャスティングには、是枝と坂元の思いが込められている。『万引き家族』に引き続き、2度目の是枝作品への出演となる安藤。あまり時間を開けずに彼女と再びタッグを組んだ経緯について是枝は、「安藤さんは底知れない女優さんですよね。『万引き家族』のとき、自分はまだこの人のいちばん深いところにタッチできていないと思ったので、もう一度お仕事できるチャンスを狙っていました」と語った。一方で保利を演じる永山は、「それでも、生きてゆく」、「最高の離婚」、「anone」といった坂元が手がける作品に多数出演。是枝はそんな彼が坂元脚本に愛される理由を「保利先生は彼に対して当て書きされた役ですが、坂元さんが書いたドラマ『最高の離婚』で彼が演じた役柄もそうだったように、どこか気持ち悪いと思われてしまうあの感じを、きちんと理解したうえで魅力的に表現できる人は、ほかにいないと思います。坂元さんが書く脚本の理解力がとても高いんですよね」と明かした。
豪華なキャスト陣が圧巻の演技力で作り上げた本作。そんな彼らが織り成す「怪物」探しのはてに待つものをぜひ劇場で見届けたい。
文/高木郁