「完成しただけで金メダルを取った気分」『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』監督トリオが語る、壮絶な舞台裏
「ビジュアル面では、ムンバッタンを作り上げるのが大変でした」(ジャスティン・K・トンプソン)
――本当に作るのが大変な映画だったと思いますが、中でも一番大変だった部分はどんなところでしたか?
ドス・サントス「完成にこぎつけるまでが大変でしたね。とはいえ、特に大変だったのは、大きなアクション・シーンの振り付けです。大きくなればなるほど、(アクションに集中してしまって)ストーリーやキャラクターの感情を見失ってしまいがちなので、そうならないようにするのが一番大変でした」
パワーズ「ストーリーや編集という観点から言えば、複雑なストーリーや、コンセプト、キャラクターをどうやってわかりやすく見せるかがすごく難しく、本当に時間がかかりました」
トンプソン「ビジュアル面では、ムンバッタン(スパイダーマン・インディアの住む都市)を作り上げるのが大変でしたね。非常に複雑で、自分はいままでには使ったことのなかったテクニックを駆使して作ることとなりました。ただツールを開発するだけじゃなく、そのツールをどうやって使うかも考える必要があり、またその限界を把握するというのも難しいものでした」
――3人で初めて監督をしてみて、いかがでしたか?
パワーズ「最高ですよ」
ドス・サントス「本当に!」
トンプソン「もうすっかり友達です。それぞれ違った得意分野と経験を持っていて、尊敬し合う関係になりましたが、それだけじゃなく一緒にいて本当に楽しいんですよ」
パワーズ「何年も共に仕事をすることになるので、一緒に楽しく過ごせるということは大事なポイントです。同じ潜水艦に乗り込んでるようなものですからね」
トンプソン「いろんな映画を一緒に観ました。そのお陰でお互いをサポートしながら映画を作れたとも思います。例えばビジュアル面でこういうことをしたいとなると、じゃあストーリー面はこうしようみたいに、フィードバックを出し合い、互いに支えていったんです」
ドス・サントス「力が最大限出せるように、ギャップを埋めていったという感じですね」
「いまインタビューを受けられているというのが、私たちにとってオリンピックで金メダルを取ったようなものです」(ホアキン・ドス・サントス)
――細部にこだわりが感じられる映画でしたが、特にこだわったというところはありますか?
パワーズ「山程ありますね。アニメは撮影したものが写る実写映画とは違うので、画面に映るものは意図的に映るようにしているものです。道に紙のコップが転がっていたとしても、それはわざわざ置いたものなのです。だから普通に観ている観客は気にしないであろう細かなディテールに私たちはこだわって、悩まされたりすることもあるんです。例えば、マイルスが訪れるジャマイカ系のボデガ(料理の販売も行う、コンビニのような雑貨店)でちゃんとジャマイカのビーフパティ(牛ひき肉のパイ料理)を登場させ、ほかのメニューもちゃんとジャマイカ料理になるようにしました。そういう本当に細かいところにこだわっていますよ」
ドス・サントス「たくさんのスパイダーマンが登場しますが、それぞれがちゃんとスパイダーマンっぽい動きをしつつも、違いが出るようにこだわりました」
――そんなたくさんのスパイダーマンのなかで、特にお気に入りのキャラクターは誰ですか?
ドス・サントス「パヴィトル・プラパカール(スパイダーマン・インディア)ですね。本当にすばらしいキャラクターで、試写の時も非常に好評で、出てきて喋るたびに皆が笑顔になっていましたね」
トンプソン「私にとってマイルス・モラレスは史上最高のスーパーヒーローです。でも、今作での新キャラクターを挙げるんだとしたら、スパイダー・パンクですね」
パワーズ「私はミゲル(・オハラ。スパイダーマン2099)ですね。いろんな側面を持った複雑なところがお気に入りです」
――ミゲルの話は来年公開予定の3作目(『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』)で掘り下げられそうですが、もう完成しているのですか?
パワーズ「ははは。いいえ(笑)」
ドス・サントス「いま、2作目を完成させてインタビューを受けられているというのが、私たちにとってはもうそれだけでオリンピックで金メダルを取ったようなものですよ(笑)」
取材・文/傭兵ペンギン