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世界中をトリコに!靴をはいた2.5cmの“貝”、賢くて愛らしいマルセルにキュンキュン

コラム

世界中をトリコに!靴をはいた2.5cmの“貝”、賢くて愛らしいマルセルにキュンキュン

発想がユニーク!生活を楽しもうとする姿勢が素敵

おしゃべり上手で、頭の回転も速いマルセルの日常生活は、楽しむための工夫がいっぱいだ。バスルームで巻き毛を手に入れてロープにしたり、テニスボールを移動手段にしてみたり。マカロニを上手に奏でるのにもビックリ!さらに、木になっている果実を効率よく収穫するために家電を活用し、ハチミツの意外な利用方法にも関心させられる。

家庭内にある道具を上手に利用して快適生活!
家庭内にある道具を上手に利用して快適生活!写真:EVERETT/アフロ

一軒家を拠点に生息しているマルセルたちにとって、情報源であり楽しみの1つはテレビを観ることだ。かつては毎週決まった曜日にコミュミニティ内の貝たちが集まり、みんなで番組を楽しんでいた。国歌斉唱は「スポーツの試合開始の曲でしょ?」とコメントするなど、偏見のないまっすぐな瞳で世界を見つめるマルセルの瑞々しい感性にハっとさせられ、そのユニークな切り取り方に思わず笑ってしまう。

食料もちゃんと備蓄するマルセル。クランベリーはごちそうだ
食料もちゃんと備蓄するマルセル。クランベリーはごちそうだ写真:EVERETT/アフロ

わずか2日間で作成した短編と異なり、この長編映画が完成するまでには7年もの歳月がかかった。その理由は、今では特別な存在となったマルセルを売り渡すようなことをしたくなかったキャンプ監督が、自分たちに誠実な物語を語る方法を模索したからだという。そして短編と同様にドキュメンタリーの設定でいこうと思い至り、小さな貝たちが織りなすエモーショナルな物語が生まれた。その日々を描くなかで、マルセルたちのユニークな感性と創意工夫に満ちたエピソードが作品をさらに魅力的にしているのは間違いない。

マルセルとコニーの絆に涙し、決断に勇気づけられる!

普通、貝のコミュニティとしては20匹以上で生活するものらしい。マルセルは「僕の家族はどこにいるんだろうと思うと、時々寂しい」とディーンに告白する。そこでマルセルの離れ離れになった家族を見つけるためにドキュメンタリー映画を制作してYouTubeにアップすることにするが、一躍人気者となったマルセルを一目見ようと人々が家まで押しかけてきたことで、コニーとの日常に支障が出てしまう。

マルセルとコニー、お互いを大切に想う気持ちにグッとくる!
マルセルとコニー、お互いを大切に想う気持ちにグッとくる!写真:EVERETT/アフロ

可能性に満ちたSNSの世界に飛び出ていくことと、大切な家族との生活を守ること。マルセルはどちらを優先すべきか葛藤する。そんな現代的なテーマもまた映しだす本作では、孤独感にさいなまれたマルセルが、ただ家の前で写真を撮るだけの野次馬を見て「みんなオーディエンス(観客)であって、コミュニティ(仲間)じゃない」と語る言葉が印象的だ。

「60ミニッツ」は実在するアメリカの人気ニュース番組
「60ミニッツ」は実在するアメリカの人気ニュース番組写真:EVERETT/アフロ

そんな折、マルセルがよく観ていたニュースショー「60ミニッツ」からインタビュー依頼が舞い込む。体調が良くない祖母を気遣い出演を躊躇するマルセルの背中をそっと押してくれるコニー。このエピソードも胸アツで、観ればきっと涙腺が緩み、彼らのことがさらに好きになることだろう。


新たな出会いと成長を描く『マルセル 靴をはいた小さな貝』。爽やかな感動と一歩踏み出す勇気をくれる小さな貝マルセルの可愛らしさを、心ゆくまで堪能してほしい。

文/足立美由紀

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