ハイテンションな憑依演技に圧倒される『Pearl パール』、抱腹絶倒の『トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~』など週末観るならこの3本!

コラム

ハイテンションな憑依演技に圧倒される『Pearl パール』、抱腹絶倒の『トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、シリアルキラー、パールの誕生を描く『X エックス』(22)の前日譚、三谷幸喜監督作を中国の喜劇集団“開心麻花“がリメイクしたコメディ、“洒落怖”に投稿された最も怖いと評される恐怖談の実写映画化の、怪演に圧倒される3本。

パールの純真さと狂気の二面性を体現…『Pearl パール』(公開中)

【写真を見る】鬱屈した日々を送るパールの狂気は次第に暴走していく(『Pearl パール』)
【写真を見る】鬱屈した日々を送るパールの狂気は次第に暴走していく(『Pearl パール』)[c] 2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. All Rights Reserved. 

『ミッドサマー』(20) 『LAMB/ラム』(22)のA24製作によるホラー映画3部作の第2作。前作『X エックス』でポルノ映画撮影隊の若者たちを血祭りに上げた、シリアルキラーの老婆パールの若き日の物語だ。時は第一次世界大戦末期の1918年。厳格な母親に抑圧されたテキサスの農場の娘パールは、映画の踊り子たちに憧れ、きらびやかな空想世界と過酷な現実の狭間で揺らめいている。

そんなパールが外界への憧れをふくらませたことから暴力衝動を炸裂させ、ついには怪物的な殺人鬼へと変貌していく様を描出。ハリウッド黄金期のメロドラマやファンタジーの様式を取り入れたカラフルな映像美が、パールの夢と現実の途方もないギャップを鮮烈に印象づける。さらにタイ・ウェスト監督と共同で脚本も手がけた主演女優ミア・ゴスが、パールの純真さと狂気の二面性を体現。そのハイテンションな憑依演技に圧倒されずにいられない!(映画ライター・高橋諭治)

暑苦しいまでの演技を十分過ぎるほど堪能できる…『トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~』(公開中)

殺し屋を演じることになった売れない俳優ウェイが騒動を巻き起こす『トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~』
殺し屋を演じることになった売れない俳優ウェイが騒動を巻き起こす『トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~』[c]New Classics Media

『ザ・マジックアワー』(08)のリメイクは本家とはまた違った魅力に満ち溢れている。売れない俳優が殺し屋役をオファーされ、撮影と思いきや、現実のマフィアの抗争に巻き込まれてしまう抱腹絶倒ストーリー。ガンアクション、マフィア、ドタバタコメディ、三谷幸喜のアイディアとはいえ、中国が舞台の方が俄然、相性が良い。

さらに豪華キャストで細かな登場人物まで見逃せないのが三谷作品の特徴だが、こちらはキャラクターの数を絞ったシンプル構造。主役の熱のこもった暑苦しいまでの演技を十分過ぎるほど堪能できる。本家佐藤浩市のナイフ舐め演技を継承、白いタキシードで「007」シリーズのダニエル・クレイグ風にもなり、『デスペラード』(95)のバンデラスを思わせる姿もあれば、踊れないフレッド・アステアにも扮する。万年エキストラの主人公による映画スター気取りの役作りに1秒たりとも目が離せない。演じるウェイ・シャンはこれが映画初主演の舞台出身俳優。初の大仕事にテンション高め、気合十分で臨む彼自身の姿が役柄と重なり、エンドロールでは思わぬ感動が待ち受けている。(映画ライター・髙山亜紀)


夏の暑さを吹き飛ばすのにピッタリの体感型最恐ホラー…『ヒッチハイク』(公開中)

ネット掲示板発の殿堂入りホラーを実写映画化した『ヒッチハイク』
ネット掲示板発の殿堂入りホラーを実写映画化した『ヒッチハイク』[c]2023「ヒッチハイク」パートナーズ

その車には、絶対に乗ってはいけない!インターネット掲示板「2ちゃんねる」のオカルト版スレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」(通称“洒落怖“)。『きさらぎ駅』(22)や『樹海村』(21)の元ネタの恐怖体験談でも知られるそんな“洒落怖“の中でも、最も怖いと言われていた戦慄の都市伝説がついに禁断の映画化‼ハイキング帰りの山道で迷ってしまった大学生の涼子と茜、同じ山でヒッチハイクの旅をしていた健と和也は運よく通った白いキャンピングカーに乗せてもらうが…。

時代遅れのカウボーイハットを被ったジョージと名乗る男(あの川崎麻世が怪演!)と無表情のその妻ジョセフィーヌ、頬に赤と青のアザがあり、不気味な笑い声を響かせる金髪の双子の姉妹。さらに車内のどこかから悲鳴に近い赤ん坊の泣き声まで聞こえてくるし、家族が振る舞ってくれた羊料理(!?)は吐き出しそうになるぐらい臭くて食べ続けられない。しかも、なにかが変だ!と、不穏な空気を察知してその場から逃げ出そうとしても、同じ場所にまた戻ってしまうラビリンス。いったいなにが起こっているのか?この気味の悪い家族の正体は?『きさらぎ駅』の宮本武史の脚本を『コープスパーティー』(15)などの山田雅史監督がリアルに視覚化した本作は、夏の暑さを吹き飛ばすのにピッタリの体感型最恐ホラー。さあ、あなたはこのおぞましい惨劇の山から、無事に生還することができるだろうか?(映画ライター・イソガイマサト)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

※川崎麻世の「崎」は立つ崎が正式表記

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