「ただ、いい作品を作りたい」ハリソン・フォードや監督らが“最後のインディ・ジョーンズ”に懸けた想いを語る
「インディ・ジョーンズは欠点だらけ。それでも、みんな彼のようになりたいと思う」(マッツ・ミケルセン)
『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(08)でケイト・ブランシェットが演じた旧ソ連の軍人、イリーナ・スポルコなど、個性と魅力にあふれたヴィラン(敵役)たちは、「インディ・ジョーンズ」シリーズの目玉でもある。今作では、デンマークの名優マッツ・ミケルセンが元ナチスで現在は物理学者のユルゲン・フォラーを演じている。「15歳の時に『レイダース』を観て、俳優になりたいと思った」と語るミケルセンは、マンゴールド監督に続き子どもの頃の夢を叶えたことになる。「なぜ人々は『インディ・ジョーンズ』を愛するのか。それは映画が魅力的で、キャラクターに魅力があるからでしょう。この男は欠点だらけで、嘘をついたり盗みを働いたりする。それでも、みんな彼のようになりたいと思う。この映画を観て、『監督になりたい』と心に決めた映画関係者も多いでしょう。42年後にその一翼を担えたことをとても誇りに思っています」。
デンマーク人であるミケルセンがナチスの役を演じるのはもちろん初めて。ミケルセンは、フォラーが抱く飽くなき情熱をもとに役作りをしていったと言う。「フォラーが情熱を傾ける先――仕事、数学、科学そして明るい未来。これらに渾身的に情熱を捧げられるところは長所と言えます。 でも、第三帝国に対する情熱は、彼の身の破滅を招くことになる。そういった“長所”のような人間的な部分を探し、彼が夢見ることに共感するように演じました。彼は夢を抱き、情熱を傾けている。その夢をなにかほかのものに置き換え、理解するようにしました。それが物語にうまくはまっているといいのですが」と、難解なヴィラン役の役作りについて語っている。
「インディ・ジョーンズがこんなにも長い間、観客のみなさんに寛大に受け止めてもらえたことはとてつもない恩恵」(ハリソン・フォード)
マンゴールド監督は、過去の「インディ・ジョーンズ」シリーズ4作品のスティーブン・スピルバーグ監督と逐一会話を交わしていたと認める。そのうえで、この作品を「インディ・ジョーンズ」らしい作品にするものは、キャラクターと物語だと断言する。
同様に、ジョーンズ博士を40年以上演じてきたフォードも「俳優とは、物語を語るサービス業従事者です」と言う。そして、「ジムはストーリーテラーの責任者で、私はアシスタントといったところでしょう。私が長年にわたって学んだことは、単純に、経験からしか学べないということ。だから、この40年の間に、キャラクターを知るようになっただけでなく、自分の仕事についても少しはわかるようになったと感じているんです。ほんの少しだけかもしれません。なぜなら、このキャラクターが観客のみなさんにとって意味するものが、私にとってのインディ像だからです。私には、物語の中で最善を尽くすことだけが義務付けられているのです。インディ・ジョーンズがこんなにも長い間、観客のみなさんに寛大に受け止めてもらえたことは、私にとってとてつもない恩恵だと個人的に感じています。私たちが作ってきた物語を人々が気に入ってくれたことが、私にとって大きな意味があるのです。そして、今作における貢献についても、気に入っていただけると光栄です」と語り、長年にわたるフランチャイズ作品の主演を自身の演技で締めくくれることを誇りに感じているようだった。映画のあり方が激変している昨今、ハリソン・フォードとインディ・ジョーンズのように有終の美を飾れるのはとても幸福なことだと言えるかもしれない。
取材・文/平井 伊都子