YouTubeからアカデミー賞へ!“おしゃべりな小さな貝”マルセルはこうして生まれた

インタビュー

YouTubeからアカデミー賞へ!“おしゃべりな小さな貝”マルセルはこうして生まれた

実写とストップモーションを組み合わせ、モキュメンタリーの手法も取り入れたユニークな作風にエモーショナルな物語。世界中の映画祭を熱狂させた『マルセル 靴をはいた小さな貝』(公開中)は、2010年にYouTubeで公開された短編作品から始まった。その後、2011年と2014年にも新たな短編作品が作られ、約7年の歳月をかけて長編映画化。第95回アカデミー賞では、本編中の多くを実写パートが占める作品としては異例の長編アニメーション賞ノミネートを果たした。短編を共同で制作し、本作では監督・脚本・出演を務めたディーン・フライシャー・キャンプ監督と、脚本とマルセルの声を担当したジェニー・スレイトが本作の誕生秘話を明かした。

些細なおふざけから長編映画に!「6ドルくらいでマルセルはできた」

Airbnbでとある一軒家に越してきたアマチュア映像作家のディーンは、その家で祖母のコニーと二人暮らしをしている小さな貝のマルセルと出会う。離れ離れになってしまったマルセルの家族を探すために動画を撮影してYouTubeに投稿すると、瞬く間にSNS上でバズり、マルセルは一躍全米中の人気者に。しかし野次馬が家にまで押しかけたことでマルセルとコニーの日常は脅かされてしまう。

YouTubeからアカデミー賞まで、一気にスターダムを駆け抜けた本作の主人公は、身長2.5センチでおしゃべりな小さな貝の“マルセル”。いったいこの魅力的なキャラクターはどのようにして誕生したのか?「少しずつ形になっていった」とキャンプ監督とスレイトが語り始める。

「最初に生まれたのは“声”でした」と、スレイトは振り返る。「ディーンと私がある結婚式に出席した時、2人ともお金がなかったから、友人たちと一緒にホテルで一つの部屋に泊まることにしました。その時、私はとても窮屈で自分が小さくなったように感じたのでしょう。ふざけて思いつくままに、ものすごく小さな声で話し始めたんです」。

3つの短編作品からスタートした“マルセル”の物語
3つの短編作品からスタートした“マルセル”の物語[c]2021 Marcel the Movie LLC. All rights reserved.

「その後、地元のコメディショーのために短編を1本作ることになった時、ジェニーの“例の小さな声”を思い出しました」と、キャンプ監督はスレイトの些細なおふざけがキャラクターとして具現化していった過程を明かす。「まず小さな声をもとに、小さな登場人物を作ることにしました。カタツムリの殻に樹脂粘土、きょろきょろ動く目玉に、雑貨店で見つけたおもちゃについていた靴。全部で6ドルくらいでできたマルセルを見て、ジェニーは『これが例のあの子!』って叫んだのをいまでも覚えています」。


【写真を見る】おしゃべりで人懐っこい2.5センチの貝がPCを使いこなして家族を探す
【写真を見る】おしゃべりで人懐っこい2.5センチの貝がPCを使いこなして家族を探す[c]2021 Marcel the Movie LLC. All rights reserved.

こうして生まれたマルセルは、“作品”へとさらなる進化の道を歩むことになる。「まず僕たちでいくつかの決めゼリフになるものを考えました。そこからジェニーがアドリブでキャラクターを組み立てていく。僕がアニメーションを作り、映像を編集して上映しました。ただただ僕たち2人がおもしろいと思えることをやったまでです」。

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