『キリエのうた』映画初主演のアイナ・ジ・エンド、松村北斗&広瀬すずに感謝!「いつも近くにいてくれた」
岩井俊二監督がアイナ・ジ・エンドを主演に抜てきした最新作『キリエのうた』(10月13日公開)の完成報告イベントが7月11日に丸の内TOEIで開催され、アイナをはじめ、松村北斗(SixTONES)、黒木華、広瀬すず、岩井監督が登壇。発表された追加キャストとして、粗品、大塚愛、江口洋介、吉瀬美智子、奥菜恵、浅田美代子、北村有起哉も出席した。
本作は、『スワロウテイル』(96)、『リリィ・シュシュのすべて』(01)など名作を生みだしてきた岩井俊二監督と、小林武史(音楽)による最新作。壮絶な運命と無二の歌声を宿したキリエの音楽がつなぐ、13年に及ぶ壮大な愛の物語を描く。6月に惜しまれながらも解散したBiSHのメンバーで、現在はソロとして活動の場を広げているアイナが、歌うことでしか“声”が出せない路上ミュージシャンのキリエ役として、映画初主演を飾った。
劇中曲として6曲を制作し、劇中でパフォーマンスも披露したアイナは「この日を迎えられてすごく、すごくうれしいです」とにっこり。「初めての経験で右も左もわからないなか、岩井俊二さんや皆さんに助けてもらって、やっとやり切ることができたかなと思っています。悲しいこともうれしいことも、生きているから味わえるんだろうなと。命を燃やしていけるような歌を精一杯、真心を込めて作れたので、今日届いていたらすごくうれしいです」と上映後の会場に呼びかけ、大きな拍手を浴びていた。
アイナはこの日、BiSHが解散して以来初めての公の場となった。「錚々たる皆さんを目の前にすると、覇気がすごくて。さっき、階段の隅っこで呼吸を整えないと出てこられないくらい緊張していました」と照れ笑いを見せ、「音楽が大好きで、ロックンロール一辺倒みたいな人だったんですけれど、そんな私を岩井さんが見つけてくださって、拾ってくださった。夢みたいだなと。これを夢で終わらせちゃいけないんだなと思った。広瀬すずちゃんと松村北斗さんがいつも近くにいてくださったので、お芝居でリードしてもらって、なんとかやり遂げられたなと思っています。本当にステキな経験をさせていただきました」と監督や共演者への感謝をにじませた。
姿を消したフィアンセを捜し続ける夏彦役を任された松村は、「初めて、映画がおもしろいものかもしれないと自分のなかで気づいたのが、岩井さんの『リップヴァンウィンクルの花嫁』だった」と憧れを告白。「そこから岩井さんの映画ばかり観ていた時代があった。日々、自分を取り込みながら目の前で(映画が)作られていくというのは刺激的でしたし、この仕事を続けるうえでとかは関係なく、人生にとってとんでもない思い出の一つです」としみじみと語り、これには岩井監督も「うれしすぎます。とてつもなくうれしい」と笑顔を浮かべていた。
過去と名前を捨て、キリエのマネージャーを買って出る謎めいた女性・イッコを演じた広瀬は、「北海道のロケの時には、岩井さん自らカメラを持っていた。携帯の光を使って、右手で照明、左手でカメラマンをやっている姿を見て、すごいなと思った。一瞬一瞬、『いまだ!』という時に撮られる。ライブ感がある」と岩井作品のライブ感の秘密を吐露。現場で目にする岩井監督について、「少年のよう。でもいつも疲れ果てています」と楽しそうに語る。岩井監督は「丸一年くらい編集をやり続けていましたが、皆さんの表現力を毎日見ていても飽きることがない。皆さんの魅力だろうなと、しみじみと噛み締めてウルッときています」と役者陣の熱演に惚れ惚れとしていた。
またこの日は、アイナが主題歌「キリエ・憐れみの讃歌」を本イベントのための特別バージョンで生歌唱。ギターを羊毛が担当し、アコスティックバージョンで生歌を響かせた。間近でアイナのパフォーマンスを体験した松村は、「(撮影中に)ワンシーン、衝撃的に(感じながら)隣で聴いていた時があって。そのことを思い出した」と切りだし、「いままた本編を思い出していた。この歌声によって、この作品って図太い芯ができているなと改めて思った」としみじみ。黒木は「初めて(生の歌声を)聴いたので、いまもドキドキしているくらい。作品を観ても、アイナさんが魂を削って、その削りかすがキラキラして見えた。ゾワゾワとしています」、広瀬も「アイナちゃんは、お芝居も含めて、周りの環境や景色、温度も全部吸収して表現される方。また現場の時とは違う、声と魂を見られてうれしかったです」と興奮を口にしていた。
取材・文/成田おり枝