仲野太賀、憧れのイ・チャンドン監督を前に大興奮!「監督の作品の虜です」
現代の韓国映画界を代表する巨匠イ・チャンドン監督の全監督作と、監督自らが自身の創作活動の原点と歩みを見つめる新作ドキュメンタリー『イ・チャンドン アイロニーの芸術』(8月25日公開)を上映する特集上映「イ・チャンドン レトロスペクティヴ4K」が8月25日(金)より開催されるのに先駆け、8月9日にヒューマントラストシネマ渋谷にて先行上映会&舞台挨拶が開催。来日したイ・チャンドン監督と、監督の大ファンを公言する俳優の仲野太賀が登壇した。
『オアシス』(02)で韓国映画界初のヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)に輝き、『シークレット・サンシャイン』(07)では主演のチョン・ドヨンがカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。『ポエトリー アグネスの詩』(10)がカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞し、『バーニング 劇場版』(18)で第91回アカデミー賞外国語映画賞の最終選考に駒を進めるなど国際的に活躍するイ・チャンドン監督。今回開催されるレトロスペクティヴでは、これまで手掛けた6作品がいずれも4Kレストア版で上映される。
満席の場内から大きな拍手で迎えられたイ・チャンドン監督は「映画館で観客の皆さんにお会いするのがとても久しぶりなのでとても胸がいっぱいでうれしく思っています」と感無量の面持ちで挨拶。するとそこに、仲野が花束を携えて登壇。「初めて監督の作品に触れたのは『オアシス』でした。本当にすばらしく美しいラブストーリーで、そこから監督の作品の虜です」と熱い思いを述べた。
それに対してイ・チャンドン監督は「私の映画は観客の皆さんにとって少し居心地の悪さを感じる作品かもしれません。それでも観客の皆さんがそれに打ち勝って、登場する2人の愛を受け入れてくれたらうれしい。そんな気持ちで作りました。仲野さんは私の願った通り、“美しいもの”として受け入れてくださった。俳優でもある仲野さんがそれを感じてくれたことが尚更うれしく、とても意味のあることだと思います」と真摯にコメント。
この日のイベントでは、事前アンケートで「劇場で一番観たいイ・チャンドン作品」に選ばれた『シークレット・サンシャイン 4Kレストア』が舞台挨拶後に上映。監督は同作のタイトルについて、劇中の舞台である密陽という地方都市の名に子どもの頃から惹かれ、詩的な意味を感じていたことを明かしながら「いったいそれはなんなのかを探し続けるような、私たちにとっての人生を象徴しているように感じていました」と語る。
一方で仲野は同作について「人間のあらゆる側面をまざまざと見せつけられる。主人公が絶望の淵に追いやられる姿、藁をもつかむ気持ちで神様を受け入れる姿、その先にある究極の決断だったり、人間って聖なるものと俗的なものを行ったり来たりするなと思って、信じたり疑ったり、人間の複雑さに心を揺さぶられて…」と熱弁。それにはイ・チャンドン監督も「“聖”と“俗”はこの映画のスタート地点で、言い当ててくれたことに驚きながら感謝していますが、初めて観る方のためにもそれ以上は言わないでください」と、にこやかに微笑みながら制止する一幕も。
最後に監督へ訊きたいことを問われた仲野は熟考の末、「映画を撮るうえで、脚本を描くうえで、人間を描くうえで大切にしていることは?」と質問を投げかける。すると監督は「本物の人生を描きたい。ありのままの人間の姿を見せることで観客がそれを本当のように感じられたら自分の人生と重ねて結びつけてくれると思う。そういう映画で私は皆さんとコミュニケーションを取りたい」と回答。
そしてMCから「(監督の作品に)出たいですか?」と問いかけられた仲野は「そりゃそうです!」と即答し、「日本の映画もイ・チャンドン監督に多大な影響を受けていますから、多くの皆さんに観ていただきたいです」と呼びかけていた。
文/久保田 和馬