INI高塚大夢が語る、研究欲で乗り越えた声優初挑戦。自ら作詞した主題歌に込めたメッセージ
ウクライナの映画業界に貢献するため、クラウドファンディングや賛同する企業の後押しによって日本での劇場公開が実現したアニメーション映画『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』(公開中)。本作で主人公のルスラン役の日本語吹替声優を務めたグローバルボーイズグループINIの高塚大夢は、初めて挑んだ“声優”という仕事の難しさと、そこから得た学びについて語ってくれた。
「声優をやるまで、作品には声しか残らないと思っていたので、どうやって声に感情を乗せるかということばかりを考えていました。でも実際にやってみて、表情であったりその時の動きであったり、声以外のことも大切な要素なのだと実感することができました」。
「何度もセリフを声に出して特訓を重ねました」
本作は、東欧を代表するアニメーションスタジオAnimagradが制作したファンタジー・ラブストーリー。騎士に憧れを持つルスランと王女であるミラ、身分が違う2人はお互いの素性を知らぬまま出会い、恋に落ちる。しかし悪の魔法使いチェルノモールがルスランの目の前でミラを連れ去り、ミラの愛の力を自分の魔力に変えようと試みる。ルスランは、愛するミラを助けるために旅へと出るが、そこには様々な困難が待ち受けていた。
2021年にオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」を勝ち進んだ11人で結成されたINIで、メインボーカルを務める高塚。「映画に携わること自体が初めてでしたし、以前から声優の仕事をやってみたいと周囲に話していたので、本当に貴重な経験でした」と、この新たな挑戦を充実感たっぷりに振り返る。「しかも主人公の声をやらせてもらえるなんて。うれしいという気持ちと同時に、はたして自分に主役が務まるのだろうかという不安やプレッシャーも込み上げていました」。
その不安を乗り越えるきっかけとなったものは、高塚自身が備えている貪欲なまでの研究熱心な姿勢だったようだ。「まず考えたことは、わからないことが多いなかで自分になにができるのかということでした。台本をしっかりと読み込み、すべてのシーンでルスランがどういう気持ちでいるのか、どういう気持ちでそのセリフを言っているのか。オリジナル音声で作品を観ながらそれを考え自分なりに解釈を重ね、何度も何度もセリフを声に出して練習を重ねていきました」。
そして「ルスランは元々売れない役者をやっていて、初めはホウキやバケツで騎士の真似事をしていました。やがて物語が進むにつれて、彼は本物の剣を手にして戦うようになり、変化していく。ずっと憧れていたものに手が届いた時のワクワク感や力がみなぎる感じは、僕自身がINIとしてずっと憧れていたステージに立てたいま感じていることと重なるものがありました」。自身が演じるキャラクターに寄り添い、自分自身との共通点を見つけること。それを第一歩として、高塚の研究欲と知識欲はさらに加速していったようだ。
次に高塚が手を伸ばしたのは、これまで数多く作られてきた海外のアニメーション作品の日本語吹替版だ。「いろいろな作品を観て勉強しました。特にディズニーアニメの『アラジン』は主人公の人物像や世界観が本作と似ているので参考になりましたし、どの作品もキャラクターの表情がとても豊かに感じました。それぞれの表情に合わせた適切な声の表現はどういうものなのか、それをどうやって出していくのかを考え、ディレクターさんから助言もいただきながら自分なりの言い回しを見つけ出していきました」。真剣な表情で語る高塚は、「難しさもありましたが、とても楽しい経験でした」とあどけない笑みをこぼした。
また普段からアニメ作品をよく観ているという高塚は、「今回の仕事を経験して、アニメの見え方はだいぶ変わりました」と語る。「これまではただストーリーを楽しむだけだったのが、最近では『いまの言い回しはどうやってやるんだろう?』とか『どう表現したんだろう?』とか、息遣い一つまで気になるようになりました。作品を観ながらセリフを真似してみたり(笑)。今回学んだことがたくさんあるので、また声優に挑戦したいと思っています」と、新たな武器を手にしたことでさらに開かれた未来にきらきらと目を輝かせた。