真木よう子と今泉力哉監督が語り合う、他者を“わかろうとする”こと。『アンダーカレント』での初顔合わせに迫る
「『人をわかること』ではなくて『人をわかろうとすること』の大切さを描いた」(今泉)
――『アンダーカレント』では真木さんの周りに個性的な俳優陣が集まって独特な雰囲気を作っていますね。
今泉「撮影前、真木さんとは一度だけ『顔合わせ』みたいなかたちでお会いしたんですけど、そこで真木さんにキャストの相談をしたんです。というのも、原作のイメージと合うキャスティングをするのももちろん大切ですけど、撮影以前から真木さんと関係性がある人と作ったほうが、僕が知る前の時間の積み重ねが作品を助けてくれるんじゃないか、という考えが頭にあったからなんです」
真木「そういう時って、尊敬している役者じゃなかったら、名前を出さないですよね。リリー(・フランキー)さんも(永山)瑛太も、江口(のりこ)も(井浦)新さんも、みんな信頼のおける俳優だったから、大丈夫だと思えたんです。会ったことのない人と演技をするとしたら、『そこまで仲が良くないんだ』ということがスクリーンに映しだされちゃうかもしれない。けれど、たとえば江口のりこと芝居をするのなら、まったくそういう心配がないんです」
今泉「その顔合わせの際に、真木さんが瑛太さんと共演したテレビドラマ『最高の離婚』の印象的だったシーンの話とかをしたんですけど、実際、瑛太さんとのシーンには、それまでの2人の時間がなければ生まれない空気が映っていたと思います。演技って、相手に委ねる部分がすごく大きいと思うんですけど、最初から関係性がある相手とだと、その委ねられる信頼の幅が違うというか」
真木「私にとっては家族に近いぐらいの人たちが集まってくれた撮影でした。私生活の歴史もあるけど、みんなプロの方なので、普通の友だちとも違うわけですよ。もう『君にだったら別に食われてもいいよ』ぐらいに思っていて。実際私、リリーさんには、そう言いました。だから、安心して撮影に臨めました。みなさんにすごく感謝しています」
「大切な人には、どんなに拒絶されようが一番の理解者でいたい」(真木)
――最後に。『アンダーカレント』では「人をわかるって、どういうことですか?」というセリフがキーになっていますよね。このテーマを前に、お2人はどんなことを考えましたか。
今泉「映画を作りながら考えていたのは、これは『人をわかること』ではなくて『人をわかろうとすること』の大切さを描いた作品なんだ、ということ。それは、かなえと悟の話だけではなくて、戦争とか大きな話でも同じだと思います。他人のことも、自分のことについてさえも、わからないことはいっぱいあるけど、それでも『知ろうとすること』で解決することは多々あると思うんです。それが優しさの正体だと思います」
真木「私は、かなえちゃんを演じてみて、一つ気づいたことがあるんです。かなえちゃんには、自分だけは許すことのできない過去があって、その記憶が沸きだしてくる。そういう大切な人が近くにいたとしたら、私はどんなに拒絶されようがなにされようが、一番のよき理解者でいたいなって思ったんです。そこが重要なことなんだ、と気がつきました。私のことで考えれば、娘がいま、大反抗期なんです。本当のことをなにも言ってくれない。だから、こっちから彼女のことを考えたりするんです。娘が私のそばに寄ってきたけど、これはさっき(娘が私に)ちょっと言い過ぎたからかな、とか。やっぱり、娘のことが大好きだから。大切な人だったとしても、価値観がまったく同じわけではない。そういう時に『わかろうとすること』って本当に大切なことだと思います」
取材・文/寺岡裕治
本記事は『アンダーカレント』劇場用プログラムに掲載されているインタビューのダイジェスト版です。完全版はパンフレットでお楽しみください。
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衣装協力(真木よう子)
ワンピース ¥75,900 / AKANE UTSUNOMIYA
右イヤーカフ ¥143,000、右イヤーカフパーツ ¥35,200
左イヤーカフ ¥77,000、左イヤーカフパーツ1 ¥55,000
左イヤーカフパーツ2 ¥49,500、左中指に付けたリング ¥539,000 / 共にoeau (オー)
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