オフィシャルグッズに長蛇の列!劇場外も楽しみたっぷりな釜山国際映画祭&グルメレポート
現在、第36回東京国際映画祭も開催中と、映画祭シーズン真っ盛り。今年の第28回釜山国際映画祭(以下BIFF)では、69か国209本の公式招待作品、コミュニティBIFF(映画関係者と観客が力を合わせ、映画を様々な方法で観られるように支援するプログラム)上映作の60本、合わせて269本が上映された。アジア最大級の映画祭として珠玉の作品に出逢えるだけでなく、開放感のある会場のロケーションなど、いわばBIFFならではの“フェスティバル”として楽しみが満載なのが魅力でもある。ぜひ現地の空気を味わいながら、来年以降、現地を訪れる参考にもしてほしい。
トレンドを取り入れたオフィシャルグッズに連日長蛇の列
毎回根強いファンが多いのが、BIFFオリジナルの映画祭記念グッズだ。過去には『オールド・ボーイ』(03)の名シーンをイラストでプリントしたトートバッグなど、独特のセンスにしびれる品々が多く人気を集めている。
最近、韓国では「키링」(キーリング)と呼ばれるぬいぐるみのキーホルダーをバッグやデニムにつけるのがオシャレなのだそうだ。そんなトレンドを感じさせるグッズが「Doll key ring」。ふさふさの毛にクリっとした目が何ともファニー&キュート。映画祭の序盤ですでに完売してしまい、受注生産(海外配送不可)に切り替わるなど大人気の品だった。
さらに社会的な役割にもコミットしようという試みも、さすがはBIFF。「THEATER IS NOT DEAD」をスローガンに、映画祭会場にもなっている大手シネコン・CGVの古いスクリーンをアップサイクルしたトートバッグとチケットホルダーも観客から好評だった。
フライドチキンにテジクッパ、ミルミョン…釜山っ子が認めた映画祭グルメ
そして多くの観客が毎年楽しみにしているのが、ここでしか味わえない周辺の美味しいお店。今年会場に登場したのは、ユ・ヘジンがキャラクターを務めるフライドチキン店「노랑통닭」。サクサクの衣を纏ったジューシーなチキンが、甘酸っぱい唐辛子ソースと最高にマッチしていた。韓国のフライドチキンは基本的に2〜3人前なので、シェアして食べるのがオススメなグルメだった。
とはいえアジア最大の映画祭。たった1人でやって来たストイックな映画マニアも多いことだろうし、大人数で楽しむメニューは少し敷居が高いのではないだろうか。コンビニの海苔巻きを食べながら会場までダッシュ…!もいいかもしれないが、一人でも釜山を存分に感じられる料理もある。その一つがミルミョンだ。
その由来は朝鮮戦争が勃発した1950年以降。戦火を逃れてきた北の避難民が、故郷である平壌の冷麺を再現しようと作って食べたのがきっかけと言われている。韓国の冷麺と言えば、ジャガイモやそば粉によるコシの強い麺が特徴だが、ミルミョンは小麦粉で出来ている。当時食料不足で従来の冷麺の材料が手に入りにくかったため、援助物資としてアメリカから支給されていた小麦粉を代用したのだそうだ。冷麺よりも爽快感があると根強いファンが多い。BIFFのメイン会場である映画の殿堂付近にも、映画祭の関係者御用達の冷麺店がある。
もう一つの名物がテジクッパだ。韓国南東部の慶尚道地方の郷土料理で釜山を代表するグルメで、様々な豚肉の部位をじっくり煮込み、ご飯やそうめんと一緒に食べる。スタミナがありながらも優しい味わいに、初秋の寒さも吹き飛んでしまう。
テジクッパと韓国映画は、実は深いゆかりがある。廬武鉉元大統領が弁護士時代に担当した事件をモチーフに、ソン・ガンホが社会派弁護士に扮した『弁護人』(13)の重要な小道具となるのがテジクッパだった。作品のことをより深く味わっている気持ちになるから不思議だ。
西面(ソミョン)のテジクッパ通りには、釜山っ子が認める名店がズラリと揃っている。朝からでもいけるあっさり系からお腹にたまるこってり系まで、店によって千差万別。センタムシティから乗り換えなしで約20分程度とやや遠いが、足を運ぶ価値はあると思う。映画祭以外でもぜひ訪れていただきたい。
取材・文/荒井 南