アツいドラマを通して浮かび上がる人類とAIの未来図…『ザ・クリエイター/創造者』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、人間とAIの種別を超えた絆を描くSFアクション、石油資源を巡る先住民連続殺人事件を基にしたマーティン・スコセッシ最新作、新人コンシェルジュの奮闘の日々を収めた“動物×百貨店“エンタテインメントの、バラエティに富んだ3本。
アツいドラマを通して浮かび上がる人類とAIの未来図…『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)
AIの進化は現代人には軽視できない事象だが、それが進んだとき、AIと人類は敵対するのか!?そんな未来をシミュレートしたのが、このSF大作。進化し過ぎたAIの使用を全面禁止した米国が、AIと共存するニューアジアと戦争を繰り広げている世界。辛い過去を抱え、密命を受けて戦地に飛んだ米国の兵士が、幼い子どもの姿をしたAIと出会ったことで数奇な運命をたどる。
壮絶な戦場を行くアドベンチャーに主人公のラブストーリーが絡むドラマは、観る者の感情を揺さぶらずにおかない。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)をよりエモーショナルにしたような、ギャレス・エドワーズ監督の共感性の高い語りも光る。アツいドラマを通して浮かび上がる人類とAIの未来図に注目を!(映画ライター・有馬楽)
メリハリのある流れで飽きさせない…『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(公開中)
その世界に安心して身を任せられつつ、激しく心がざわめき続ける…。そんな映画体験を望む人には極上の一作。巨匠マーティン・スコセッシが再現する、いまから100年前のアメリカ、オクラホマの街のムードに没入した後は、この地で起きるあまりに奇怪な連続死亡事件のミステリーへと引き込まれていく。先住民オセージ族の不可解な死が次々と紹介される冒頭からして、圧巻の映像。FBI誕生のきっかけとなった事件を描くとあって、要所で背筋も凍るシーンを用意され、斬新な演出のクライマックスまで、3時間26分、メリハリのある流れで飽きさせない。
レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロというスコセッシ作品の“顔“を担ってきた2人の名優が、物語のなかでは悪の側面を演じているが、誤った信念で非情な行動もとる人間のサガを、大げさにならず表現し続けたのは、さすがの一言。さらに印象的なのは、こちらもスコセッシ作品には何度も関わってきたロビー・ロバートソンの音楽で、今回はシーンや演出との異様な一体感に驚くばかり。今年8月に逝去したロバートソンの、最後にして最高の仕事を堪能したい。(映画ライター・斉藤博昭)
気持ちを前向きにリセットしてくれる…『北極百貨店のコンシェルジュさん』(公開中)
小学館「ビッグコミック」で連載、第25回(2022年)文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞した作品を、「ハイキュー!!」シリーズや「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」などで知られるProduction I.Gがアニメ映画化。原作者の西村ツチカはイラストレーターとしても活躍するだけあり、絵柄が実にスタイリッシュで全てのカットがアート作品。北極百貨店の新人コンシェルジュ、秋乃が、百貨店を訪れる動物たちの要望に応えるべく奮闘しながら成長、その先に心温まる展開と感動が待ち受けている…。
ワライフクロウ、ウミベミンク、ニホンオオカミなど絶滅種が多く登場し、いわゆる“お仕事モノ”でありながら、生物の多様性における問題にもさらりと触れているのもミソ。約70分という長さもちょっとした気分転換にぴったりで、物事に行き詰まったり心がちょっと疲れてしまった時、気持ちを前向きにリセットしてくれる大人のファンタジー作品だ。(映画ライター・榑林史章)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼