兵器として生まれたロボットの暴走を描く「PLUTO」悲しみや憎しみを超えてたどり着く普遍的なメッセージ

コラム

兵器として生まれたロボットの暴走を描く「PLUTO」悲しみや憎しみを超えてたどり着く普遍的なメッセージ

2003年から連載され大きな話題になった浦沢直樹の漫画「PLUTO」が、20年経ってついにアニメ化!10月26日よりNetflixにて独占配信がスタートした。手塚治虫が「鉄腕アトム」のなかのエピソードとして1964年に執筆した「地上最大のロボット」が原作だが、そのボリュームは180ページほど。「PLUTO」ではコミックス全8巻となり、ページ数だと約10倍。そこにいったいどんなドラマがプラスされたのか。登場するロボットたちを含め、アニメ「PLUTO」を楽しむためのポイントを漫画「PLUTO」をベースにご紹介。

ロボット&サスペンスで魅せる「PLUTO」

「地上最大のロボット」は、「鉄腕アトム」のなかでも多くのファンが一番に挙げるほどの人気エピソードだ。リメイクするに至るまで作者としては大きな葛藤と勇気が必要だっただろう。しかし連載が始まると人気は爆発、多くの漫画賞も受賞している。

モンブランが殺されたあと、彼の近くには2本の角のようなオブジェが
モンブランが殺されたあと、彼の近くには2本の角のようなオブジェがNetflixシリーズ「PLUTO」独占配信中

では、原作との違いを簡単に紹介しよう。手塚版では冒頭からプルートゥが登場し、「世界で一番強い7体のロボットを倒す」目的も明かされる。だが「PLUTO」では世界最高水準のロボットの1体が破壊されたというニュースからスタート。犯人を探すため、ユーロポール特別捜査官のロボット、ゲジヒト(声:藤真秀)が登場し、物語は彼の捜査と共に進んでいく。一方、その直後に世界トップレベルの博士が惨殺される事件が発生。ただ、その現場には人間の痕跡がなく、ロボットでなければ犯行はできないという。そして各々の事件には「被害者に2本の角を立てる」という状況が共通して残っていた。この2つの事件の犯人は同一人物なのか?しかし「PLUTO」の世界において、”ロボットは人間を傷つけることはできない”よう設計されているため、人間を殺すことはできないはず…。

何者かによって殺されたロボット法に関する要人。そこにもまた2本の角のようなものが…
何者かによって殺されたロボット法に関する要人。そこにもまた2本の角のようなものが…Netflixシリーズ「PLUTO」独占配信中

「PLUTO」では、ロボット同士のアクションだけでなく謎を解き明かすミステリーとサスペンスがプラス。SFが苦手という人でも、これらの要素には興味が湧くのではないだろうか。と同時に、人工知能(AI)がどう進化発展していくのか、人間とロボットは共存できるのかなど、原作「鉄腕アトム」で内包されていたテーマがさらに深く描かれている。また、アトムを主人公としないことで、「鉄腕アトム」を知らない人でも入りやすい物語になっているのが特徴だ。


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