浦沢直樹、関俊彦との再タッグに笑顔!「PLUTO」世界最速ワールドプレミアで「手塚先生に描かせてもらった」と感謝
手塚治虫の不朽の名作「鉄腕アトム」の人気エピソードを原案に浦沢直樹がマンガ化した「PLUTO」がアニメーションとなり、Netflixシリーズ「PLUTO」として10月26日よりNetflixにて独占配信開始となる。本作の世界最速ワールドプレミアが10月20日、TOKYO NODE HALLにて開催され、ゲジヒト役の藤真秀、アトム役の日笠陽子、プルートゥ役の関俊彦ら声優陣が、浦沢と共に登壇した。
アニメ化の企画開発から10年以上の月日を経て完成した本作。企画の立ち上げ当初は劇場映画というアイデアも出ていたという。「劇場映画で2時間のサイズで考えていると聞きました。でも僕が描いた全8巻の『PLUTO』が(そのサイズに)入るわけもなく(笑)」と振り返った浦沢は、「どうやったら作品化を実現できるのか、プロデューサーとの話し合いを重ねました」としみじみ。「Netflixのようなメディアが出てきたことで、実現に繋がりました」と時代の変化に触れつつ、コミック1巻を1話で描く「理想的な形に落ち着きました」と満足の表情を浮かべた。
浦沢は漫画家の引退を考えるほどのプレッシャーを感じながら、漫画を描いていたという。「ちょうど『20世紀少年』という作品を描いている時に、左肩を脱臼して全然描けない状態でした」と、長年の無理がたたったと説明。そんななか、漫画「PLUTO」の企画がスタートしたそうで、「(脱臼が理由で)しばらくお休みをいただいていた2003年に企画の話があって。果たして描けるのかという思いもありましたが、月1連載で試しにやってみようということになりました。描き始めると恐ろしいもので、仕事に体がなじんでいくんです。習性って恐ろしいですよね(笑)。漫画が描けるようになって、全8巻完走することができました」とニッコリ。「手塚先生に描かせてもらったような感じがしました」と笑顔で振り返った。
キツい思いをして描いた作品がアニメ化されることには正直戸惑いもあったと苦笑い。「(漫画を)描き終わり、やっと解放されたと思ったのに、これからまたあの(キツい)山に登るのか、と。みなさんの無事を祈るような感じで見ていました。そして、みなさんが無事で本当に良かったです」とアニメ化に携わったスタッフへの労いも口にしていた。
「手塚さんと浦沢さん関わる作品で演じることは大きなプレッシャーでした」と話した藤は「浦沢さんが抱えた苦悩とは比べものにならないとは思うけれど、なんとか辿り着きました」とホッとした表情を浮かべる。アトムという誰もが知るキャラクターを演じることに「プレッシャーしかなかった」と話した日笠は「家族みんなが大ファンの『PLUTO』のオーディションを受けさせていただくこと自体もうれしかったです」と笑顔を見せ、プレッシャーはかなりのものだったとしながらも「合格をいただいたことには驚きましたが、アトムとして生きる、この短い瞬間だけでも向き合った気持ちが(合格に)伝わったのかもと思いました」と自身がオーディションに合格した理由を分析していた。
「言葉で役にアプローチすることができなくて大変でした」と語った関は、煮えたぎる怒りや悲しみが生まれる理由を探るべく浦沢の漫画を何度も読み込んだという。「教科書として読み込み、(アフレコに)立ち向かいました。言葉に表せないのがプルートゥのプルートゥたる所以ですが、そのものどかしさを抱えながらの前半戦のアフレコは本当に大変でした」と役作りの苦悩を明かした関に対し浦沢は「僕のなかで関さんは『YAWARA!』における松田さん(笑)。松田さんがプルートゥをやるの?って思いました」とニコニコ。関との再タッグを喜び、「年齢を重ねて声にも深みが出て。プルートゥをやる年齢になったのかな。お互いに一線で生き延びて良かったねと話していたところです」と楽屋裏での会話を明かす。関も「再び浦沢先生の作品に関わることができて幸せです!」と応え、時を経てのコラボレーションに喜びもひとしおといった様子で微笑み合っていた。
イベント中盤には、世界最速ワールドプレミアのお祝いにスペシャルゲストの内田理央が花束を持って登場。一足早く作品を鑑賞した内田は「めちゃくちゃ面白かったです。面白かったという一言で表現してはいけないストーリーでした!」と大興奮。高校生の頃に初めて漫画を読んだ時の衝撃が蘇ったといい、ノース2号が登場するシーンでの音楽が印象的だったとコメント。この音楽は浦沢が漫画を描いている時にイメージしていた楽曲が元になっているそうで、「ふわっと考えたメロディが曲になってすごく嬉しかったです」と浦沢自身も仕上がりに大満足といった様子だった。
取材・文/タナカシノブ