『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は北米2位スタート!歴代スコセッシ作品と興収&評価を比較
先週末(10月20日から22日)の北米興収ランキングは、『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』(日本公開中)が2週連続でNo. 1を獲得。2週目末の3日間興収は前週比35.8%の3320万ドルとやや大きな下落。とはいえ週末だけの限定興行というハンデがありながらも累計興収は1億3000万ドルを突破しており、懸念事項といえば海外興収が思いのほか伸び悩んでいることぐらいであろう。
さて今回メインで取り上げるのは、2位に初登場を果たした『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(日本公開中)だ。マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオの黄金タッグは、これが10年ぶり6度目。さらにそこにロバート・デ・ニーロまで加わったのだから、前作の『アイリッシュマン』(Netflixにて配信中)に続いてスコセッシ作品の集大成のような様相がただよう大作だ。
3628館で封切られた初日から3日間の興収は2325万ドル。近年のスコセッシ作品と比較するには、配信公開や小規模公開作が続いていたため『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)まで遡らねばならない。同作は2537館で1836万ドルのオープニング興収。また、『ディパーテッド』(06)が3017館で2688万ドルのオープニング興収を挙げており、1館あたりのアベレージで比較すればその両作には届いていないものの、今作もスコセッシ作品の一定の基準を満たしていると考えて良さそうだ。あとはこの両作と同様、最終的に1億ドル超えを達成できるかどうか。
もうひとつ気になるのは、やはりアカデミー賞で戦える作品かどうか。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は92%。これはスコセッシ監督の劇映画でみれば『ミーン・ストリート』(73)と『アイリッシュマン』の95%、『グッドフェローズ』(90)の94%、『ヒューゴの不思議な発明』(11)の93%に次いで5番目に高い数字だ。
映画化決定の時点からアカデミー賞の有力候補になると言われ続け数年。コロナ禍の制作延期でApple TV+製作となったことで一度は劇場公開が危惧されたものの、パラマウントとの共同出資となり、しかもApple TV+からもオスカー作品が輩出されるなどの時代の変化がやってきた。興行と批評を考慮しても、本作がオスカーの主要部門から候補落ちすることはまずないだろう。有力作が軒並み延期となった今年の情勢を踏まえれば、大旋風を起こす可能性も捨てきれない。
文/久保田 和馬