ルームシェアの達人、蛙亭イワクラが「ほどよい距離感が魅力」の映画『コーポ・ア・コーポ』に抱いた既視感とは?
「どんな話でも、どんな時間でも『なに?』くらいのノリで聞いてくれるのも芸人同士のいいところ」
イワクラは、これまで経験してきたルームシェアを「丁寧な暮らしの真逆」と振り返り、「暮らしが俺たちについてこいみたいなスタンスで生きています(笑)。ムカつくことも多かったけれど、楽しいこともたくさんあったし、なんとかなるとか臨機応変に対応するということを学んだ気がします。ティッシュがなければトイレットペーパーを使えばいい、みたいな。劇中でもトイレットペーパーをハンガーにかけて部屋に置いてあるシーンがありましたが、あれはあるあるかもしれないです。最初のルームシェアの時はキッチンもテーブルも床も全部トイレットペーパーでまかなって、ティッシュは買ったことないかも。床にこぼしたものも、どうせ洗濯するからと洗濯前のTシャツで拭いているヤツもいて。なんか無敵な感じがありました。私は賞味期限に囚われて生きてきたけれど、男性陣は結構強気で、火を通せばなんとかなるって食べたりして。本当に腐っていてなんとかならない時もあったけれど(笑)、ちょっと強く生きてみようと思えるようになりました」と過去3回のルームシェアから学んだことにも触れた。
石田の職場でバイトをする女子大生の高橋(北村優衣)がコーポを訪れる場面がある。借りた雨合羽とタオルを返しにさくらんぼを持ってやってきた際の彼女の反応やその後の住人たちとの交流もイワクラが注目したポイントだ。「いわゆる貧乏芸人のような生活とは無縁の女の子がルームシェアの様子を見て、『ここで暮らしているの?』みたいな表情をしたのをすごく覚えています。スリッパがないことにも驚いていたし、スリッパなしでどこを歩けばいいのでしょうか、という感じで。でも、石田くんの部屋に来た女の子は割と驚いていなかった。そこもめっちゃいいなって思ったポイントです。私の友だちが泊まりにきた時は、お風呂上がりに全裸で歩く男性陣を見て大爆笑していました(笑)。裸で歩くし、床も汚いし、普通にその床でご飯を食べたりもする。『当たり前からはかけ離れているけれど、おもしろいし、憧れる』と言ってくれたのはうれしかったです」。
ルームシェアをたくさん経験してきたイワクラには、今後誰かと暮らすことについてどのような考えがあるのだろうか。「ルームシェアではなくマンションを作りたいとは思います。コーポの人たちのように、干渉はしないけれどお互いを想っている人という関係は芸人同士ではすごく多い気がしていて。めちゃくちゃおもしろいし、楽しいし、愛だけで生きている人たちなので、一緒に住んで、言いたいことを言っても喧嘩にならない。納言の薄幸さんとはよく『将来、同じマンションに住もう』と話しています。いまでも、自分の住んでいる部屋の隣が空いていたりすると、『引っ越して来ない?』って誘ったりしちゃいます。どんな話でも、どんな時間でも『なに?』くらいのノリで聞いてくれるのも芸人同士のいいところ。だから近くにいてほしいのかもしれません」。
取材・文/タナカシノブ