亀梨和也の今後の展望は“本当の自分”と向き合うこと「自分を取り戻したいなって思うようになった」
「僕自身よりは、誰かが楽しんでくれているとか、誰かを満たすことができているかのほうが大事」
時に迷いながら、時にその力を借りながら、“亀梨くん”で在り続けてきた彼。必要とあらば自身の本質を横に置き、自身の時間を削っても成すべき務めに全力を注ぐ姿勢は、役作りにおいても同じくだ。
「“僕”でいる時間を減らすほうがお芝居に集中できるんです。役作りという点で、本当のことを言えば、現場のみで生きていられるならそのほうが楽なんですよ。だけど僕は歌ったり踊ったり、スポーツニュースをやったりするから、その都度、役を出し入れしなきゃいけない。そうした生活のなかでなにを削るかといったら、“僕”自身の時間を削るしかないんですけど、そうするほうが楽だし、質が上がる感覚があります」。
なぜ、そこまでストイックに芝居と向き合えるのかを問いかけた瞬間、「ストイック」の言葉をさっと否定した。
「ストイックじゃないです、全然。ただ『足りていない』と思うだけ。僕は、自己肯定感がすごく低い人間なんです。いつも足りなさを感じて生きているから、『やんないと、やんないと、やんないと』って、やるしかない。それを努力だとは思わないです。いままで、『これでいいよね、十分やったな」と思えたことがほとんどないんです。なにをやっても、どんな仕事をしても、終わった時には『もっとああだったな、こうだったな』って思います。そんなに楽しい人生じゃないですよ、きっと(笑)。でも、だから頑張れているんです」。
そんな亀梨も、作品をはじめ関わったものが世に出た時には、満足感を得られるという。彼の喜びや幸せの軸はいつも、自分自身ではなく観客であり、関わる人々にある。やはり、生粋のエンターテイナーだ。
「映画だけじゃなく、作品は関わる皆さんあっての総合演出。だから出来上がった時には『ああステキだな』『いいものに参加させてもらえたな』って思える。それは、すごく幸せなことだと思います。僕自身、僕の欲望よりは、誰かが楽しんでくれているとか、誰かを満たすことができているかのほうが大事だし、それでお仕事をさせてもらっている立場です。だから、現場レベルで一緒に仕事をさせてもらっている方、受け取ってくださる方たちに、満足していただけるものを作りたいんです」。
「いよいよ僕も僕のために、自分に向き合ってあげる時間を取り戻したい」
亀梨和也であるよりも“亀梨くん”である道を選び、自身の想いよりも周囲を慮って生きてきた亀梨。しかし現在、そんな自分を変えようという時期に差しかかっているのだという。そして本作との出会いが、彼の背中を後押しした。
「僕のなかにあった『こう言いたい、ああ言いたい』という気持ちは、デビューして間もなくなくなってしまって、それが自分の課題でもあったんです。だけど今年くらいから、自分を取り戻したいなって思うようになりました。自分はどうありたいのか、自分をどう見せたいのか…。そんな考えが邪魔だった時期が長かったんですよね。自分の想いや欲を伏せていたほうが、スムーズに事が運ぶ場合が多いグループだったから。だけど、いよいよ僕も僕のために、自分に向き合ってあげる時間を取り戻したいなって。そう思っていた時にこの作品に出会えたので、巡り合わせに感謝しています」。
サイコパス弁護士、二宮の過去に隠されたある秘密。それにかけて、こう結んだ。
「いつからか、僕も自分の頭の中になにかを埋め込んで生きてきた気がするけど、それをやっと壊せる時期に来たのかなって思います。それが、昨年末くらいからの僕のテーマ。デビューして間もなく意識のなかに埋め込んできた“なにか”を、そろそろ取り除こうかなという作業に入っています」。
自分のために生きたいと、新たなチャプターに進もうとしている亀梨。その背中を押した『怪物の木こり』は、いつか彼が自身のキャリアを振り返った時、きっと転機と呼べる作品となるはずだ。
取材・文/新亜希子