あらゆる意味で大スクリーンで体感するべき作品『ナポレオン』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、監督リドリー・スコット&主演ホアキン・フェニックスが贈るスペクタクル大作、ホラー映画の金字塔の系譜を継ぐ正統な続編、人間に擬態した惑星難民Xに翻弄される人々を描いたミステリーロマンスの、人々の駆け引きを描く3本。
ドラマ部分でも心を掴まれる…『ナポレオン』(公開中)
その名前は誰でも耳にしたことのあるフランスの英雄。皇帝へとのし上がっていく類い稀な才覚と、一人の人間としての強烈な特性を並行して描き、アクション大作としても、人間ドラマとしても満足させる仕上がりになっている。リドリー・スコット監督らしい、壮大なスケールの戦闘シーンが、冒頭、中盤、クライマックスと要所で展開されるが、いまから200年も前の戦い方に驚きの連続。なかでも雪原と氷上での戦闘シーンは、撮影のために凍った湖を作っただけあって、信じがたい光景が収められた。
一方で“人間”ナポレオン(ホアキン・フェニックス)の側面は、妻となったジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)への過剰なまでの愛情で表現。ジョゼフィーヌもかなり奔放で、その行動に翻弄されながら、彼女との間に子どもが生まれない苦悩などにも迫り、ドラマ部分でも心を掴まれる作り。後半はジョゼフィーヌに感情移入できる流れもあり、さりげなくジェンダー問題を絡めてくるあたりも、スコット監督らしい。もちろん時代を再現した美術や衣装はディテールに至るまでこだわりが充満。あらゆる意味で大スクリーンで体感するべき作品である。(映画ライター・斉藤博昭)
ドラマ重視で恐怖を演出…『エクソシスト 信じる者』(公開中)
ホラーを代表する傑作と呼んでも過言ではない『エクソシスト』(74)の新たな続編が、50年の時を経て登場。今回の悪魔は親友同士であるふたりの少女に取り憑き、その家族を恐怖のドン底に突き落とす。悪魔祓いに挑むのは、前作で娘を救った母親。彼女は少女たちを救うことができるのか?
卑猥な発言や壮絶な自傷、顔面の豹変など、悪魔憑きの壮絶な描写は前作を踏襲。悪魔はより手ごわくなり、恐怖の強度は増していく。デヴィッド・ゴードン・グリーン監督は新「ハロウィン」三部作に続き、前作のレジェンドを主役に迎え、ドラマ重視で恐怖を演出。誰が生き残るかわからない展開はもちろん、ラストのサプライズまで、とにかく目が離せない!(映画ライター・有馬楽)
映画が問うのはもっとピュアな“信じる力“…『隣人X -疑惑の彼女-』(公開中)
移民を題材にした異色ドラマ。人間の姿をコピーできる惑星難民Xが人知れず社会で暮らしはじめた日本。スクープを狙う駆け出し記者の笹(林遣都)は“X候補者”良子(上野樹里)を調査するなか、次第に彼女に惹かれていく。謎めいたXを追うサスペンスかと思いきや、本作で描かれるのは不器用な人たちが織りなす人間ドラマ。スクープをモノにするため、笹は良子に近づきデートに誘い、恋愛関係に持ち込んでいく。根は正直な笹が戸惑いながら良子にのめり込んでいく様は微笑ましいが、そのあとに待つ苦くて痛い展開に思わず胸が締め付けられる。
内向きな国民性や手段を選ばぬマスコミを皮肉った社会派の一面も持つものの、映画が問うのはもっとピュアな“信じる力“。ちょっと視点を変えるだけで楽になれることもあるんだよ、と説く熊澤尚人監督らしい温かな語り口が心地よい。はたしてXは誰なのか、忘れた頃に明かされるその正体も余韻を残す一本だ。(映画ライター・神武団四郎)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼