松本幸四郎、祖父と叔父から「鬼平犯科帳」を引き継ぎ涙「長谷川平蔵を愛していることには負けないぞ!という気持ちで務めた」

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松本幸四郎、祖父と叔父から「鬼平犯科帳」を引き継ぎ涙「長谷川平蔵を愛していることには負けないぞ!という気持ちで務めた」

テレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」の完成披露試写会が12月7日に丸の内ピカデリーで開催され、“鬼平”こと長谷川平蔵役の松本幸四郎、若き日の“鬼平”(長谷川銕三郎)を演じる市川染五郎、サプライズゲストとして松岡重兵衛役の松平健が登壇。これまで初代松本白鸚、二代目中村吉右衛門も演じてきた平蔵役を継承した幸四郎が、ドラマのお披露目の日を迎えて感動の涙を流した。

「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」の完成披露試写会が開催された
「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」の完成披露試写会が開催された

時代劇専門チャンネルを運営する日本映画放送株式会社が、時代小説の大家である池波正太郎の生誕100年を記念し、池波の代表作にして時代劇作品の金字塔ともいえる傑作「鬼平犯科帳」の新たなる映像化に挑戦。歌舞伎俳優の松本幸四郎を主演に迎え、テレビスペシャル1作品、劇場版1作品、連続シリーズ2作品(テレビドラマ)の4作品を製作する一大プロジェクトとなる。本作は、その第1弾となるテレビスペシャルだ。

【写真を見る】感極まり、完成披露試写会で涙を流した松本幸四郎
【写真を見る】感極まり、完成披露試写会で涙を流した松本幸四郎

上映後の会場から拍手を浴びながら登場して、観客を前にして瞳を潤ませた幸四郎。「世界一の職人が集まる現場、すてきに輝いている役者さんとの現場で、長谷川平蔵を集中して務めさせていただきました」と力強く挨拶。幸四郎の息子でもある染五郎は「作品を拝見させていただいて、新しい鬼平が誕生したなと思いましたし、新時代の時代劇が誕生したなと思いました。そういう作品に関われてとてもうれしいです」と感無量の面持ちを見せた。

“鬼平”こと長谷川平蔵役の松本幸四郎
“鬼平”こと長谷川平蔵役の松本幸四郎

幸四郎にとって、初代松本白鸚は祖父、二代目中村吉右衛門は叔父にあたる。長谷川平蔵という大役を受け取った幸四郎は、「叔父の『鬼平犯科帳』をリアルタイムで観ていました。すてきさ、かっこよさ、懐の深さ、大きさを感じていた。祖父のものはビデオで観て、その太さを感じていた。どの作品を観ても『やっぱりおもしろいな、かっこいいな』と思う。その気持ちを持って、この作品に挑もうと思いました。自分流や、(これまでと)違うものということではなく、そのすてきさ、すばらしさを感じながら務めさせていただきました」と祖父や叔父が演じた平蔵へのリスペクトを胸に、役柄に挑んだという。「実際の撮影では、叔父が使っていた…」と振り返ると、堪えきれずに涙を流した幸四郎。「叔父が使っていたタバコ入れとか。お守りではなく、一番かっこいいと思って、それを使わせていただきました。誰よりも『長谷川平蔵を愛していることには負けないぞ』というつもりで、務めさせていただきました」と明かすと、会場からも大きな拍手が上がっていた。

若き日の“鬼平”(長谷川銕三郎)を演じる市川染五郎
若き日の“鬼平”(長谷川銕三郎)を演じる市川染五郎

長谷川平蔵がなぜ“鬼平”と呼ばれるようになったかを明かす本作では、これまであまり触れられてこなかった若き日の“鬼平”=長谷川銕三郎の姿も描かれる。染五郎は「吉右衛門さまのシリーズでも、ご自身で銕三郎を演じられているシーンが少しありました。その少しのシーンから吸収できることは、すべて吸収しようという思いで、撮影に入る前は毎回、叔父さまの演じる銕三郎を観て臨んでいました」と告白。「銕三郎のまっすぐさと、若いからこその危なっかしさ、ギラギラした感じを出せればいいなと思っていました」と話す。

父子で一役を演じた
父子で一役を演じた

幸四郎と染五郎の2人で、一役を演じることになった。司会から「事前に相談したことはあったか?」と尋ねられると、幸四郎は「ないね」と染五郎を笑顔で見つめ、会場も大笑い。「似ていましたかね?」と語りかけると、同意を表するように観客から拍手があがった。染五郎は「すり合わせ的なことはなかったですが、小道具の持ち方などは父から教わったり、父の撮影している現場に見に行ったりしていました」と吉右衛門を参考にした部分も大きいとしながら、「父が演じる平蔵の若いころであることに徹して、演じました」と父親の演技も研究していたという。

松岡重兵衛役の松平健
松岡重兵衛役の松平健

松平は「着流しで歩いている姿が、吉右衛門さんとダブる。そういう風格があって、さすがだなと思いました」と幸四郎が演じる平蔵を絶賛。幸四郎は「本当に幸せ」と松平との共演に感激しきりだったが、松平演じる松岡に「コテンパンにされるところが多かった。本当に怖かった」と苦笑いを浮かべた染五郎も、「殺陣の息や間合いも、もちろん染み付いていらっしゃる。松平さんと一騎討ちの稽古をさせていただいたことは、貴重な経験になりました」と喜びをにじませていた。


最後に松平は「時代劇はテレビでも少なくなっておりますが、また新たに『鬼平犯科帳』がスタートしたということは、これからも時代劇の道が見えてきているような気がします。幸四郎さんをはじめ、若手の方がどんどん時代劇を広めていっていただきたいと期待して応援していきたい」とエールを送る。松平からの言葉をしっかりと受け取った染五郎は「時代劇は、ずっと残っていてほしいジャンル。出演させていただく側の若い世代としても、頑張って残していきたいと思います」と覚悟を口にし、幸四郎は「時代劇というのは、江戸時代を作ることができるファンタジーだと思っています。人の想像力を十分に活かせるジャンル。また人と人が会うことによって生まれるドラマを色濃く描くのに、最適なジャンル」と時代劇の魅力を吐露。「新たな『鬼平犯科帳』が誕生した。絶賛、次の作品を撮影中です。『これ以上のものを』と思って、一丸となって作っております」と今後のシリーズへの意欲も語り、拍手を浴びていた。

「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」は2024年1月8日(月・祝)昼1時/夜7時から時代劇専門チャンネルにて独占放送。

取材・文/成田おり枝

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