集団パニック、少女同士の殺人…都市ボーイズがA24最大ヒットホラーに見る、オカルトとの付き合い方
「オカルトに触れるうえで大事なのは、盲信しないこと」(岸本)
はやせ「僕らも前にコックリさんやったことがありましたよね?なぜかうちの奥さんの実家の仏壇の前でやったんですけど(笑)、僕らのほかにもう1人いて、『この3人のなかで誰が売れますか?』って訊いたら、そのもう1人の名前に近付いていくので『お前動かしたやろ!』って(笑)」
岸本「やっぱり動いた時には信じられなくて、疑心暗鬼になるものです。本作でもそんなシーンがありましたが、実際に体験すると途端になんにも言えなくなる。それは本当に体験した人ならわかることだと思います。例えば、日本に昔からある“百物語”も降霊術の一つですよね。人々が集まって怪談を話して、百の蝋燭を一つ一つ消していく。最後の蠟燭を消した時、暗闇のなかに霊が降りてくるというものです。以前、ある番組で本当に百人が集まってやったことがあったんですが…」
はやせ「懐かしい…(笑)」
岸本「僕とはやせ以外の多くが若手の芸人さんたちだったので、みんな前に出ようと派手なリアクションをするんです。でもそれをやればやるほど収録時間が延びるし、たいしてなにも起きないからみんなどんどんイライラしてきて(笑)。廃病院のような場所でやったんですけど、終盤には爆音でお経が聞こえてくる演出が…。もう疲れ切っていて誰もリアクションしないし、正直『この企画ダメだな』って僕も呆れていたんです。
収録が終わってから、仲良い芸人さんと一緒にファミレスに行って打ち上げをしたんですが、もう悪口しか出てこなくて(笑)。その時に、僕がふと『お経のくだりが特に酷かったよな』って言ったら、みんなきょとんとした顔をするんです。どうやら僕以外の誰もお経を聞いていなかったと…」
はやせ「僕は収録中、一晩ずっと隣にいたんですけど、終わり際に岸本さんがずっと『うっせえよ』って言っていて。たしかにその時若い芸人さんがちゃらけていて、それがやかましいのかなと思っていたんです。そしたらファミレスで急に『お経』とか言い出して。なに言ってるんだ?って」
岸本「あの場で唯一起きていたことをスルーしてしまっていたんです(笑)。なにか起きたら手を挙げてくださいと言われていたんですが、さすがにその状況で『お経が…』とか言うのものなんだか恥ずかしくて。ですからそのエピソードはオンエアには使われていなくて、悪いことをしてしまったなと、ちょっと反省しています」
はやせ「先ほど言ったように、この映画は軽率な“遊び”への注意喚起になると思っています。ですが、一方でこの映画を観て実際に降霊術をやってみようと思う人も出てくるでしょう。僕らから言えることは、亡くなっている方へのリスペクトだけは絶対に忘れてはいけないということです。あと、注意やルールはちゃんと守ったほうがいい」
岸本「この映画のなかでもそうですけど、降霊術をやる方には2種類がいると思います。一つは興味本位の肝試し感覚でやる人、もう一つは本当に死者と話がしたいと思っている人です。前者に関して言えば、若者のなかにこういうものへの興味はなくならないと思うし、あって然るべきだとも思います。気を付けた方がいいのは後者の方です。真剣にやっている方がのめり込んでしまったり、依存したりということが起きやすい。そういう方は、降霊術がきっかけでスピリチュアルな世界がすべてになってしまい、バランスを崩してしまう傾向があります。
降霊会で起こることのすべてが正しいわけではありません。オカルトに触れるうえで大事なのは、盲信することなく、ちゃんと客観的な視点とか自分の考えを持ち続けることではないでしょうか」
取材・文/久保田 和馬