『ゴールデンカムイ』原作の完全再現を目指した衣装がお披露目!細やかなこだわりに原作者の野田サトルが太鼓判「原作ファンの方たちも実写を愛せるはず」
既刊全31巻で累計2600万部を突破している野田サトルによる大ヒットコミックを実写映画化する『ゴールデンカムイ』がいよいよ、2024年1月19日よりスクリーンに登場する。12月20日には豪華キャスト陣が登壇して完成報告会が行われると共に、こだわり抜いた衣装や小道具がお披露目となった。
明治末期を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金をめぐる一攫千金ミステリーと、厳しい北海道の大自然のなかで一癖も二癖もある魅力的なキャラクターたちが、埋蔵金争奪のサバイバル・バトルを繰り広げる本作。「マンガ大賞2016」や「第22回手塚治虫文化賞『マンガ大賞』」に選ばれ、今年は連載の完結を受けて作者の野田が「第73回芸術選奨文部科学大臣新人賞メディア芸術部門」を受賞するなど高い評価を受けている原作は、北海道やアイヌの歴史、狩猟、グルメなどの文化的要素が丁寧に織り込まれている点も、大きな魅力だ。
実写映画化に際しては「原作を映像で忠実に再現する」というコンセプトが掲げられ、主人公で“不死身の杉元”と呼ばれる元陸軍兵の杉元佐一役を演じる山崎賢人、杉元の相棒となる、北の大地を生き抜く知恵と優れた狩猟技術を持つアイヌの少女、アシリパ役に扮した山田杏奈をはじめとするキャスト陣が、個性たっぷりのキャラクターを躍動感たっぷり表現。そのハマり具合はもちろん、美術、衣装、小道具、メイク、VFXなどあらゆるポイントにおいて細部まで徹底的にこだわり、熱気と迫力に満ちた「ゴールデンカムイ」の世界を見事にスクリーンに刻みつけている。
この日お披露目となったのは、杉元とアシリパの衣装だ。キャラクターに寄り添う衣装を担当したのは、「キングダム」シリーズなどでも知られる宮本まさ江。杉元がコートのなかに着用している着物について、宮本は「『キングダム』でお世話になった福田織物に色を合わせてから糸を織ってもらいました。今回は、原作の杉元にどれだけ近づけるかがテーマ。コートもありものだと生地がないので、色を染め直したりと何度も足し引きをして、山崎さん本人の体型、ストロークに合わせたものを2回仮縫いしています」と回想。もっとも手がかかったのは、杉元のマフラーだったとのこと。「1枚の生地に全部プリントしているのですが、最後の最後までチェック柄のバランスに悩みました。杉元はずっとマフラーをしているので、幅や色味を考えるのが大変でした」と語っている。
杉元が常に持ち歩く“三十年式歩兵銃”にも、こだわりが詰まっている。ガンエフェクトを担当した納富貴久男によると、本作では遊底(ボルト)を外して操作することがストーリー上で不可欠だったため、遊底を新しく作ったという。それにあわせて刻印も打ち直している。
そのほか、杉元がいつも装着しているベルトなども当時の軍人のスタイルを入念に検証してスタッフが制作。ブーツもその時代のパーツと縫い方ですべて発注して、オーダーメイドで精巧に作られている。
アシリパが普段から腰に付けている“マキリ”(小刀)と、“タシロ”(山刀)は、アイヌ工芸家の貝澤守が原作のイメージに合わせて一から制作。それ以外もアイヌの民具はすべてアイヌにルーツを持つ伝統工芸作家の方々に協力を仰ぐ徹底ぶり。アシリパの装飾具は常に8点ほどあったが、そのなかでも“ニンカリ”(耳飾り)や、レクトゥンぺ(首飾り)はスタッフで制作。原作を教科書に金属パーツを発注し、すべて手縫いで作り上げたという。
本作のメガホンを取ったのは、「HiGH&LOW」シリーズで迫力の肉弾戦バトルアクションの演出を見せた久保茂昭。「原作の大、大、大ファン」という久保監督は、完成報告会で「すべてにこだわって撮った」とコメント。「僕らの体感的には、普通の撮影よりも15倍くらい大変な準備をしました。本作はアイヌの物語でもあると思いますので、アシリパの衣装は、すべて模様なども手縫い。1着作るのに半年くらいかかりました。“マキリ”や“タシロ”についても、1年以上かけてアイヌの方々に作っていただきました。一つ一つ、大事な小道具になっています」 とスタッフに感謝を込めながら、出来栄えに胸を張った。
細かい部分まで何度も見直したくなるような作品に仕上がった様子だが、原作者の野田は「僕は実写関係者の皆さんのゴールデンカムイに対する愛を肌で感じました」とコメント。「個人的に気になっていたのは小道具なのですが、アイヌの民具、衣装はアイヌルーツの伝統工芸の作家の方々が大勢で作ってくださっていますし、杉元の30年式小銃などもどこに出しても恥ずかしくないもの」と語り、「原作ファンの方たちも実写を愛せるはずだと信じています」とメッセージ。原作者が愛情を寄せている実写版『ゴールデンカムイ』のお目見えが、ますます楽しみになった。
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」、アシリパの「リ」は小文字が正式表記
取材・文/成田おり枝