漫画やテレビアニメからのイメージそのまま!『ゴールデンカムイ』など週末観るならこの3本
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、アイヌの埋蔵金を巡る戦いを描いた人気コミックの実写化、不幸の上に成り立つ幸せをテーマにした「第1回日本ホラー映画大賞」大賞受賞作、すれ違う母と息子の織り成す人間模様を描くヒューマンドラマの、バラエティ豊かな3本。
ある意味で実写化の一つの到達点のような作品…『ゴールデンカムイ』(公開中)
映画、ドラマにかかわらず、漫画やアニメの実写化がすっかりおなじみとなった昨今。一方で、人気作品の宿命か、根強いファンも多く厳しい意見にさらされることも。そんな背景もあり、実写化作品には常に期待と不安が入り混じってきたが、そんな風向きがだんだんと変わってきたように感じる。『ゴールデンカムイ』と同じく山崎賢人が主演を務める「キングダム」シリーズ、Netlixで配信された「幽☆遊☆白書」など、高い熱量を持った原作ファンも満足できる作品が次々とリリースされているのだ。そこには映像技術の進化だけでなく、膨大なエピソードを取捨選択して物語をバランスよく構築し、現実的なリアリティを追求し過ぎるのではなく、絶妙に二次元的な世界観が保たれているといった作り手側のノウハウが磨かれてきたのではないか?と思う。
そして、今回の『ゴールデンカムイ』。当初は少しスマートに感じた山崎演じる杉元佐一、原作と比べて年上に設定された山田杏奈扮するアシリパは、漫画やテレビアニメからのイメージそのままで、怪演が光る鶴見中尉役の玉木宏をはじめ脇を固めるキャスト陣も見事。金塊を巡る戦いも壮絶で、まさに命の取り合いといった具合で容赦がない。ヒグマとの戦い、拷問シーンなどはとにかくバイオレンス。もちろん、料理シーンやアシリパの村も登場し、アイヌ文化へのリスペクトも感じられる。本作は、ある意味で実写化の一つの到達点のような作品であり、今後より力強いコンテンツになっていくような期待も抱かせてくれた。(ライター・平尾嘉浩)
挑発的な演出に唸る90分…『みなに幸あれ』(公開中)
日本で唯一のホラー限定フィルムコンペティション“日本ホラー映画大賞”の大賞受賞作を長編映画化。田舎の祖父母の家を訪ねた看護学生の孫(古川琴音)。しかし祖父母の様子がどこかおかしい。実はこの家には、彼ら以外の“なにか”が存在していた!“誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている“――そんな説を信仰のように重んじている村の狂気。いや、これは狂気ではなく、世の真理なのでは!?狂気と正気の境界を行く物語は、バイオレントな描写に彩られて恐怖を深めていく。
『忌怪島/きかいじま』(23)の清水崇監督の総合プロデュースの下、商業映画デビューを飾った新鋭、下津優太監督の挑発的な演出に唸る90分。“皆の幸せ”は絵空事なのか?考えながら、戦慄してほしい。(映画ライター・有馬楽)
母と息子の世界が再び重なり合う一瞬の煌めき…『僕らの世界が交わるまで』(公開中)
個性派俳優ジェシー・アイゼンバーグがA24とタッグを組んで放つ初監督作。『イカとクジラ』(06)で両親の離婚を経て人間的成長を遂げる息子役を演じて時の人となったアイゼンバーグが、ラジオドラマ用のオリジナル脚本として自ら手がけ、監督デビュー作の題材として選んだのは、どこかちぐはぐな家族の物語。すれ違ってばかりだった母と息子の世界が再び重なり合う一瞬の煌めきを写し取った珠玉のヒューマンドラマだ。面倒だけれど、愛おしい――そんな家族の関係をユニークかつ温もりある眼差しで描き、登場人物たちの不器用なコミュニケーションにクスっとさせられつつも、なんだかもどかしい!
DV被害者のためのシェルターを運営するエヴリンとフォロワーが2万人いることが自慢のネット系シンガーソングライターである高校生の息子のジギー。本作が新鮮なのは、息子をしのぐこじらせっぷりを見せる母親の心情がたっぷり語られている点だろう。ジュリアン・ムーアがさすがの名演で危ういのに共感を誘う母親を体現し、物語を転がしまくるからとにかく目が離せない。また、どこかアイゼンバーグを彷彿とさせるジギーに扮したフィン・ウォルフハードの等身大の演技も魅力的で、そんななか訪れる不意打ちの爽快感も斬新!(ライター・足立美由紀)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」、アシリパの「リ」は小文字が正式表記