インクルーシブな撮影現場が垣間見える『夜明けのすべて』8mmフィルムで映したメイキング映像&写真
瀬尾まいこ原作小説を映画化する『夜明けのすべて』が2月9日(金)に公開される。本作より、メイキング映像とメイキング写真が解禁された。
「そして、バトンは渡された」で2019年本屋大賞を受賞した瀬尾の小説を原作を、『ケイコ 目を澄ませて』(22)で第72回ベルリン国際映画祭ほか20以上の映画祭への出品をはたし、第77回毎日映画コンクールで日本映画大賞、監督賞他5部門を受賞した三宅唱のメガホンで映画化した本作。NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で夫婦役を演じた松村北斗と上白石萌音が映画初共演、W主演を務め、今回は同僚役で最高の理解者となる特別な関係性を演じる。主人公は、月に一度のPMS(月経前症候群)で自らの感情をコントロールできなくなる藤沢さん(上白石)と、パニック障害を抱えたことで人生が一変した山添くん(松村)。職場の同僚として過ごす中で互いの“生きづらさ”を知った2人が、「自分のことはどうにもならなくても、相手を“助けられることはある”」と支え合っていく日常を描く。
今回解禁となったのは、撮影の裏側を8mmフィルムで切り取ったメイキング映像。降り注ぐ陽の光のようなあたたかいBGMとともに、山添くんと藤沢さんの職場である栗田科学で出演者たちが仲睦まじく笑い合う風景や、松村と上白石らのオフショットの数々が映像を彩っている。栗田科学は、家庭用プラネタリウムや顕微鏡などの科学工作玩具の製造、販売を行う会社。社長の栗田和夫(光石研)は「無理なく、怪我なく、安全に」をモットーに社員の健康を第一に考えている。劇中では、職場で山添くんがパニック障害の発作を起こしたり、藤沢さんがイライラを爆発させてしまうシーンが登場するが、社長をはじめ栗田科学の職員たちが、優しく2人に寄り添う姿が印象的に描かれている。
芝居とはいえ実際に過換気症候群になるリスクを伴った発作のシーンについて松村は「練習から本番まで、発作を起こすシーンでは常にすぐ近くに医療監修の先生がいて、リアルに見えるかを確認しながら、同時に僕のケアをしてくれました。そこは、最初から三宅監督が気遣ってくれていましたね」と三宅組の真摯な姿勢を印象深く振り返った。PMSの症状による感情の浮き沈みを見事に表現した上白石は「演じるうえで悩んだり苦しかったりしたことはたくさんありましたけど、そういうものすべてをプラスのエネルギーに変えられる現場でした。全員が一個一個のシーンにこのうえなく愛情を注いでいる現場で、まだ終わりたくない、ずっとここにいたいと思いながら撮影していました。みんなでなにかをつくるってこんなに楽しいんだ、と思い出させてもらった気がします」と振り返っている。
また、主演2人をフィルムカメラで撮影したオフショットも公開。絶妙な距離感で佇む松村と上白石はまさに山添くんと藤沢さんそのもの。2人でブランコを漕ぐ姿や、休憩中にくつろぐ松村、マフラーに包まる上白石など、それぞれのリラックスした表情も見どころとなっている。澄んだ空気と柔らかな日差しの中、山添くんと藤沢さんが築いていく特別な関係性や2人の良き理解者たちとの関わりあいが感じられるものとなった。
絶妙な距離感を保ちながら、徐々に心を開いていく2人の姿はどのような感動を呼ぶのだろうか?本作をぜひ劇場で楽しんでほしい。
文/鈴木レイヤ