クリストファー・ノーランと9年ぶりのタッグ!『オッペンハイマー』でマット・デイモンが演じた軍人レズリー・グローヴスとは?
第96回アカデミー賞で作品賞や監督賞など最多13部門にノミネートされている、クリストファー・ノーラン監督の最新作『オッペンハイマー』(3月29日公開)。このたび本作から、“マンハッタン計画”を指揮した米陸軍工兵隊の将校レズリー・グローヴスを演じたマット・デイモンのコメントを入手した。
本作は第二次世界大戦下、世界初の原子爆弾の開発・製造を目的とした極秘プロジェクト“マンハッタン計画”に参加した理論物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの知られざる人生に迫る物語。ロスアラモス国立研究所の所長を務め、マンハッタン計画を遂行したオッペンハイマーは、自らが開発した原爆が投下されたことでもたらされた惨状を知り深く苦悩することに。さらに彼は、冷戦や赤狩りなど激動の時代の波に呑み込まれていく。
デイモンが演じたレズリー・グローヴスは、マンハッタン計画を率いて、このプロジェクトにオッペンハイマーを抜擢した人物。ニューメキシコ州のロスアラモスに研究所を建設し、開発を急ぐ政府からの圧力に腐心した軍人として知られている。製作を務めたエマ・トーマスはこの役柄に挑む俳優について「すぐ観客の気持ちを持っていける人で、映画俳優らしい俳優で、ちょっと威張っているけど深く信頼できるような人が必要でした」と振り返り、デイモンがそれに適していたと太鼓判をおす。
当のデイモン自身は「この歴史上の出来事がもたらした結果のなかに生きてきた。そういう視点でずっと物事を観てきた。興味深かったのは、時間を遡り彼らがなにを考えていたのか、彼らになにが怒ったのか、彼らの前にどんな恐ろしい決定が提示されたのかを知ることだった。この探究には汚い政治や野心、モラルの問題が絡みついている。人間の好奇心や誘惑と野心、どこまで知ることができるのか、なにが起こるのか見てみたい、そうした人間の信じがたい本性がここにはあらわれています」と説明。
そして「グローヴスはエゴをもち、誰にも好かれたわけではない。でもオッペンハイマーは彼が好きだった。彼らの間には理解と親しみがあり、グローヴスはオッペンハイマーがなぜそれをしているのか疑うことはなかった。この工学上の偉業、彼らの努力が科学の上で持つ意味に絶対の誇りを抱いている。こんな人物を演じるのは魅力的だった。彼は自信に満ち、頭は良いが、周りは自分とはまったく別の次元で生きている天才たち、同じ野心を抱きながらも、もっと葛藤を抱いている天才だらけだった」と、演じる上で意識したグローヴスの内なる部分を明かした。
ノーラン監督の作品には『インターステラー』(14)以来9年ぶり2度目の出演となったデイモン。キャリア35年、ハリウッドを代表する中堅俳優のひとりとして多くの監督たちから絶大な信頼を寄せられているデイモンが、本作でどのような演技を見せているのか注目だ。
文/久保田 和馬